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2019年9月14日(土)

主張

停電被害の深刻化

なぜ教訓が生かされないのか

 首都圏を襲った台風15号によって、千葉県での大規模な停電や断水の長期化をはじめとして各地に重大な被害が広がっています。猛暑の中でエアコンが使えず熱中症の疑いで搬送される人が相次ぎ、亡くなった人まで出ています。住民の命と健康にかかわる事態を一刻も早く解消することが必要です。政府や関係機関は、電気や水道などライフラインの回復に総力を挙げるとともに、住宅や産業・農業などの被害の全容把握を急ぎ、被災者支援を強めることが重要です。日本共産党は、現場の切実な声を踏まえ、復旧と支援を最優先に取り組みを強めています。

「いつまで」と苦悩の声

 なにより深刻なのは長期の停電です。停電戸数は7都県で最大約93万戸にのぼり、いまも千葉県の広い範囲で続いています。東京電力は完全復旧に、まだ時間を要する地域が少なくないとしています。冷房もなく、水の確保もままならず、暑さの中で耐え抜く被災者は「いつまで続くのか」といらだちを募らせます。医療機関や高齢者施設では非常用発電などでしのいだところもふくめ、綱渡りの対応が迫られています。通信も断たれたため、必要な情報が受け取れない被災者が数多くいます。

 全面復旧へスピードを上げるため、支援体制の一層の強化をはじめ、知恵と力を結集する時です。回復が遅れそうな地域には、正確な情報提供や生活支援体制を手厚くするなど住民の声に応えた苦難の解消策を講じるべきです。

 復旧が当初の見通しよりずれ込んでいることについて東京電力は、現場の倒木被害が想定よりひどかったことなどを挙げ、想定が甘かったことを認めています。しかし、これらは決して「想定外」と言ってすまされません。台風によって倒木が多く発生し、復旧が難航することは、昨年相次いだ台風被害の痛苦の教訓だからです。

 昨年の台風21号で220万戸が停電した関西電力や、台風24号で100万戸が停電した中部電力は、対応を検証した報告書で、山間部での作業の困難さが停電復旧の遅れを招き、その改善を急ぐことを課題として強調しています。経済産業省内の電力供給体制についての会議も昨年まとめた文書で「復旧の妨げとなる倒木等の撤去の円滑化に資する仕組み等の構築」を検討することを提起していました。さらに一連の文書では、停電長期化などについての情報発信の不足や遅れが住民や自治体に不安を与えたことも問題にしています。

 これらの指摘を、東電をはじめ電力会社、政府はどう受け止め、具体化に向けた措置をとったのか。教訓は生かされなかったのか。東電は送配電設備への投資額を減らしたことが設備を老朽化させた可能性があると報じられています。停電を引き起こし、長期化させた要因を徹底的に検証することは、再発防止のために不可欠です。

全容を早くつかみ支援を

 建物の損壊被害の広がりは千葉県内にとどまりません。東京都の伊豆大島など島しょ部では、多くの住宅や学校に被害が出ました。横浜市金沢区では工業団地が高波で浸水しました。ビニールハウス倒壊など農業被害は各地で深刻です。被害の全容をつかみ、支援・復旧を急ぐべきです。台風シーズンは終わっていません。被害を拡大させない取り組みが急務です。


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