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2019年9月8日(日)

主張

介護保険の改悪

「使えない」の加速は許されぬ

 厚生労働省の審議会が、来年の通常国会に提出予定の介護保険法改定案の策定に向けた議論を本格化させています。要介護1、2の人の生活援助を保険給付の対象から外すことや、利用料2、3割負担の対象者を広げることなどを検討します。介護保険では、「必要になっても使えない」「費用負担ができず利用を控える」ことなどが、いまも大きな問題になっています。厚労省が検討する方向は、利用者・家族に一層の苦難を強いるものです。安心して利用できる制度を求める国民の声に逆らい、暮らしをますます深刻化させる介護保険の改悪はやめるべきです。

制度の根幹に関わる問題

 介護保険の制度改定の議論は、厚労省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の介護保険部会で行われています。厚労省が先月29日の同部会に示した検討項目は、介護保険サービスを使うことを抑え込む仕組みづくりや、利用者が負担する費用をさらに重くする内容が数多く盛り込まれました。

 その一つが、要介護1、2の「軽度者」が利用する生活援助サービスを、介護保険の給付対象から除外するというものです。「軽度者」をめぐっては、すでに要支援1、2の訪問・通所介護が2014年の介護保険法改悪によって保険給付から外され、市区町村の裁量で行われる「総合事業」に移されました。しかし、「総合事業」は、自治体によってサービスの内容や担い手の確保などで格差があり、全ての利用者に同じサービスが保障されるかどうか、大きな不安を残しているのが実態です。そのもとで、新たに要介護1、2まで保険給付の対象から外すというのは、極めて乱暴です。

 保険給付費を圧縮したい財務省などは、「軽度者」は「小さなリスク」であり、「自立で対応」することを求めますが、実態を見ない主張です。認知症などは、専門家が初期段階で微妙な状態の変化に気付き、早期に対応してこそ進行を抑えることも可能です。それには早い時点で、公的介護の仕組みに基づく支援が欠かせません。「軽度者」対応を軽視するやり方は、介護状態を悪化させる高齢者を増大させ、かえって給付費を膨張させる結果にしかなりません。

 だいたい、高い保険料を払い続けてきた人が、要介護と認定されたにもかかわらず、保険給付にもとづくサービスが使えないというのは、「保険」という仕組みのあり方の根幹に関わる大問題です。

 厚労省が、原則1割の介護利用料負担をめぐり、2、3割負担になる人を増やすことを検討項目に挙げたことも重大です。現在も一定所得以上が2、3割負担にされる中、必要なサービスを削ったり、介護施設から退所したりする人が少なくありません。2割以上負担が「原則化」されるようなことになれば、経済的負担に耐えられない人が介護サービスから締め出される事態を続発させます。

暮らし支える仕組みこそ

 厚労省は、ケアプラン作成の際の利用者負担の導入も狙います。介護保険利用の出発点であるケアプラン作成の有料化は利用抑制の加速を決定的にするものです。

 10月からの消費税増税が「社会保障のため」といううそはいよいよ明白です。安倍晋三政権の介護改悪を許さず、暮らしを支える社会保障への拡充が急務です。


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