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2019年8月23日(金)

韓国 軍事情報協定破棄

政府発表 日本政府は抗議

 韓国政府は22日、日韓の軍事機密の共有に関するルールを定めた軍事情報包括保護協定(GSОMIA)を破棄すると発表しました。協定の自動更新の期限である24日までに日本政府に書面で通告します。

 韓国政府は22日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開催。GSОMIAの延長可否をめぐり議論しました。会合後、大統領府の金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長は会見で、破棄の理由として、「日本政府が2日に明確な根拠を示さず、韓日間の信頼が失われ安保上の問題が発生したとの理由で貿易管理上の優遇対象国から韓国を除外した。両国間の安全保障協力の環境に重大な変化をもたらしたとみなした」と説明。「こうした状況で安全保障上の敏感な軍事情報交流を目的にした協定を維持することは韓国の国益に合致しないと判断した」としました。

 GSОMIAをめぐっては、日本政府が元徴用工をめぐる韓国最高裁判決に対する報復措置として、韓国向けの輸出管理を強化して以降、韓国政府内で「韓国を信頼できないとする国と敏感な軍事情報を交換することが正しいのか」などと、見直しを示唆する声があがっていました。

 今回の決定で悪化している日韓両政府間の関係が、いっそう深刻化するとみられます。

 GSOMIAは、米国の「ミサイル防衛」システムに日本や韓国を組み込むためのもの。日韓間では2016年11月に締結。有効期間は1年で、期日の90日前に当たる毎年8月24日までに一方が破棄を通告しない限り自動的に延長される仕組みでした。

 日本政府は22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた韓国政府に外交ルートを通じて抗議しました。


図

解説

「徴用工」報復で軍事も悪循環

 韓国政府は22日、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定し、内外に大きな衝撃を与えました。韓国大統領府は日本の対韓輸出規制強化が「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」として、日本政府が安全保障上の貿易管理に関する優遇対象国から韓国を除外したことに対する対抗措置だとしました。

 この問題の発端は、日本政府が元徴用工をめぐる韓国国内の判決に対して真摯(しんし)に向き合わないばかりか、「徴用工」問題という政治的紛争の解決の手段として貿易問題を使うという、政経分離の原則に反する道理のない対応をとったことにあります。

 経済や観光・文化交流に加え、軍事分野にまで、安倍政権の報復措置による悪循環が広がっていることを示す動きです。

 GSOMIAは、国家間で軍事上の機密情報を提供し合う際、第三国への漏えいを防ぐために結ぶ協定で、日本は2007年、軍事一体化を加速する狙いから、初めて米国と締結。13年に強行された特定秘密保護法の源流でもあります。

 一方、16年11月に締結された日韓GSOMIAは、両国を米国主導の「ミサイル防衛」網に組み込み、北東アジアでの軍事的優位を確立する狙いから、米国の要求に沿って締結されたものです。念頭にあるのは北朝鮮による相次ぐ核実験や弾道ミサイル発射に加え、「対中国」もあるとの指摘もあります。

 しかし、韓国国内では当初から、植民地支配に伴う歴史問題を抱える日本への軍事情報提供に強い抵抗があり、12年6月には、締結の1時間前に延期された経緯があります。過渡的な措置として、14年12月には、北朝鮮関連の情報に限り、米国を経由して日韓の情報を共有する取り決めがかわされました。

 こうした経緯から、対米関係にもかかわる協定であるため、当初は延長を決定した上で、運用を制限するなどの見方も出ていましたが、韓国政府は「国益にそぐわない」として破棄を決定しました。自国の利益最優先を掲げるトランプ政権の下、米国の同盟管理能力の劣化も垣間見えます。

 今後、必要なのは、日韓両国が冷静な話し合いにより、事態を解決することです。何があっても、外交チャンネルは途絶えさせてはなりません。

 (竹下岳)


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