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2019年8月16日(金)

きょうの潮流

 開拓された山奥の地でした。北海道苫前村三毛別(さんけべつ)。1世紀以上前にそこで惨事が起きました。巨大なヒグマが何度も民家を襲撃し、7人もの命が奪われたのです▼日本で最悪の獣害といわれる「三毛別羆(ひぐま)事件」。一頭のヒグマがなぜ執ように人家を襲い、被害を大きくしたのか。魔獣や惨劇といった恐怖ばかりが伝えられますが、そこには人間がクマと共存するうえでの教訓が残されています▼きっかけは軒先に干されていたトウモロコシでした。空腹を抱え人家までやってきたクマ。食物にありつけることを知って、ふたたび。そして人は恐れるに足りずということも。やがて人肉の味を覚え、行動は激化していく▼背景には開拓民がクマの生態や習性を知らずに危険を避ける対策をとらなかったことがあります。襲来後も好物のトウモロコシを干し続けたり、クマを見て悲鳴をあげたり。不幸な事件を誘発する原因は、ほとんど人間の側にある。そう専門家は指摘します▼札幌の住宅地をのし歩くヒグマがニュースになったと思ったら、こんどは秋田で新聞配達中の女性が襲われました。相次ぐ出没には餌不足にくわえ、農林業の衰退や境界となる里山の消失などが連鎖しています。それは地方の荒廃とも無関係ではありません▼日本も批准する生物多様性条約。野生動物を生態系の重要な構成要素と位置づけ、その適切な保全や管理を国に義務づけています。恐ろしきものと忌避せず、どう共生していくか。人間に投げかけられている課題です。


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