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2019年7月29日(月)

主張

プラごみ対策

市町村への押し付けをやめよ

 海洋プラスチックごみをはじめとするプラごみの生態系への影響が深刻化する中、その対策は、地球環境の将来を左右する重要な課題です。

 6月末の大阪での20カ国・地域首脳会議(G20)では、2050年までに海洋プラごみによる新たな汚染をゼロにすることをめざす「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が採択されました。日本は1人当たりの使い捨てプラの廃棄量が、米国に次ぎ2番目に多い国です。自国のプラごみ対策を抜本的に強化することが、国際的な役割を果たす大前提です。

国内での処理が原則に

 「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」は、新たな汚染ゼロの達成期限が遅すぎることなどから環境NGOから「不十分」と指摘されています。しかも、日本政府の施策はあいまいです。安倍晋三首相はG20で途上国の廃棄物管理やインフラ整備を支援すると表明しました。産業界と連携し「廃棄物発電施設」「廃棄物処理関連施設等のインフラ輸出」などを海外に展開するというものです。しかし、これが途上国にとってどこまで有効かは定かでありません。

 より大きな問題は、国内でのプラごみ対策です。日本は年間900万トンのプラごみを排出し、約100万トンを東南アジアに輸出してきました。しかし、東南アジアの諸国が輸入の中止に踏み出しています。

 さらに、有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約が5月に改定され、汚れたプラごみが規制対象に加えられました。国内処理が原則になり、相手国の同意のない輸出は禁止されます。日本は従来の対応を大本から見直すよう迫られています。

 日本は産業廃棄物に該当するプラごみが全体の8割、約700万トンを占めており、その処理が輸出禁止で行き詰まっています。環境省は5月、市町村などで産廃プラごみ処理を「検討」する、域外の産廃受け入れ規制を「廃止、緩和」する要請の通達を出しました。一般廃棄物を燃やす自治体の焼却施設で広域の産廃も燃やすものです。

 自治体から「住民の理解が得られない」「焼却施設の負担が大きい」など困惑の声が上がっています。廃プラを燃やすと焼却施設が高温になり、施設が傷みます。少しでも施設の寿命をのばそうと努力している市町村にとって、産廃プラごみの受け入れは現実的ではありません。

 政府は「緊急避難措置」だといいますが、国内処理が原則になった以上、緊急避難ではすみません。これまでの体制の抜本的な見直しは不可欠です。自治体に押し付けるのではなく、生産の段階からプラごみ減量対策にのりだすことが国の責任です。その際、「熱回収」という名で、焼却処分を対策の主流にするやり方を続けてはなりません。政府自身が、熱回収はあくまでも「最終手段」と言っていたことを肝に銘じるべきです。

拡大生産者責任の徹底を

 生産者が、製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで責任を負う「拡大生産者責任」の立場でシステムを見直すことが必要です。

 海へのプラごみ流出でも、現行の処理システムのどこに欠陥があるのか、徹底した調査を行い、本腰の対策をすすめるときです。


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