2019年7月28日(日)
米軍機事故「指針」改定
「迅速な立ち入り可能」誇るが… 米軍の判断次第
「地位協定」の抜本改定こそ
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日米両政府は25日の日米合同委員会で、基地外で発生した米軍機事故に関するガイドライン(指針)を改定しました。河野太郎外相は同日の記者会見で、日本側が事故現場へ「迅速に立ち入りを行うことが明確になった」と誇りますが、立ち入りを認めるかどうかは米軍次第です。小手先の運用改善ではなく、日米地位協定の抜本改定が求められています。
立ち入れない
ガイドラインでは、基地外で米軍機事故が発生した場合、現場に「外周規制線」「内周規制線」という二重の規制線を張ることになっています。外周規制線は見物人などを規制するために日本の警察が管理しますが、機体に近い内周規制線は機体の機密保持などのために事実上、米軍が独占的に管理し、警察も立ち入ることができません。
2017年10月に沖縄県東村高江の民間牧草地で発生した米軍ヘリ墜落事故では、日本側当局者は内周規制線内に数日間立ち入ることができず、その間、米軍は土壌を勝手に持ち去りました。
こうした対応に批判が集まり、今回の改定で、消防や汚染物質の調査などの必要性に応じて、日本側当局者による「迅速かつ早期の立ち入りが行われる」と明記されました。しかし、「(立ち入りが)可能な場合には、…当該要請の諾否を通知される」との文言が残っており、米軍次第であることは何ら変わっていません。
承認なく封鎖
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さらに重大なのは、改定によって、米軍の一方的な現場封鎖・日本の警察権放棄が明確化されたことです。
新指針は、基地外の公有地や私有地での米軍機事故で、米軍は日本政府当局や土地の所有者の「事前の承認なくして…立ち入ることが許される」と明記しました。
従来の指針では、正文である英文には「事前の承認なくして」(without prior authority)とされている一方、日本語訳(仮訳)には、「事前の承認を受ける暇(いとま)がないときは」と記されており、食い違いが生じていました。今回の改定で、英文にあわせ、民間の土地であっても米軍が無許可で封鎖できることを明確にしたのです。
さらに、事故機の残骸、部品などに関して「資格を有する者のみに…アクセスが付与される」と明記。警察に事故機の差し押さえや捜査の権限がないことを明確化しました。
法的拘束なし
こうした問題の背景にあるのは米軍の特権を定めた日米地位協定です。第17条10項bでは、米軍が基地外でも警察権を行使できる枠組みがあり、さらに23条では米軍の財産権を保障。日本国民の財産権を優越しています。
一方、欧州では、米軍機の事故が発生した場合の対応は、「警察が現場を規制」(ドイツ)、「検察が証拠品を押収」(イタリア)、「警察が現場を規制・捜索」(英国)するなど、受け入れ国が強い権限を確保しています。
日米両政府はこれまでも、犯罪に伴う米兵の身柄引き渡しや環境汚染への対応などで“運用改善”を行ってきましたが、いずれも法的拘束力はありません。
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