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2019年7月26日(金)

主張

相模原事件3年

尊厳認め合う社会への転換を

 神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者19人が殺害され、職員を含め27人が重軽傷を負った事件からきょうで3年です。殺人罪などで起訴された元職員の被告は「障害者は生きていても仕方がない」などと殺害を正当化し、重度障害のある人を標的にしました。障害者への憎悪に満ちた残忍な犯行で肉親らを奪われた人たちの心の傷は癒えることはありません。異常極まる被告の言動は、全国の障害者や家族をはじめ、国内外に衝撃を与えました。二度と悲劇を生まない社会にするためになにが必要なのか。いまも問われ続けています。

誤った思想の横行許さず

 「障害者には生きる価値がない」という被告の主張は、人に優劣をつけ“劣った人”を排除する「優生思想」に他なりません。被告はいまだに、その考えを変えていないといいます。来年1月から始まる見通しの公判で、なぜ被告が障害者への憎しみを増幅させ、優生思想に固執していったのか、徹底的な解明は不可欠です。

 多くの人が危機感を募らせるのは、“勝ち組・負け組”という言葉をはじめ、“生産性や効率性の劣る人”などと決めつける不寛容がまん延し、多様性や個人の尊厳を認めない差別や分断の風潮が強まっている中で、事件が引き起こされたことです。優生思想に通じる誤った考えを広げず、ただしていく社会的な取り組みがいよいよ重要となっています。政治も問われます。LGBT(性的少数者)の人たちへ「生産性がない」と差別的暴言をした自民党議員の責任を問わないなど安倍晋三政権の姿勢はあまりに重大です。

 旧優生保護法(1948~96年)の下で、障害などを理由に約1万6500人もの人が不妊手術を強制され、子どもを産むかどうかの自己決定権を奪われました。手術を強制されたのは違憲・違法だとして女性2人が訴えた裁判で仙台地裁は5月、旧法の違憲性を認定する一方、損害賠償請求を棄却しました。国会では4月、被害者に320万円を支払う一時金支給法が成立しました。優生思想を違憲とするなど前進面はありますが、支給額など不十分です。一時金の抜本的な増額など早期の法改正が必要です。国としての責任を果たすことが求められます。

 障害者への差別の根深さを示したのは、昨年夏に大きな問題になった官公庁などによる障害者雇用数の偽装です。国民からの大きな批判を浴びて、今年の通常国会で改正障害者雇用促進法が成立しました。障害者が長く働き続けられる労働環境整備に国の役割はますます重要です。

 さきの参院選で、重度障害の人をはじめ障害のある人が当選しました。議員活動をするうえで設備面でのバリアフリー化や質疑のあり方など、さまざまな人たちが国政の場で活動できるよう障壁となるものを取り除いていくことが期待されます。

ともに力を合わせて

 障害者への差別や偏見を許さないことをはじめ、だれもが尊厳をもって生きられる社会にしていくことが急がれます。日本国憲法や障害者権利条約を生かした政治の実現は欠かせません。生産性や効率性ではかる社会から、お互いの尊厳を認め合う社会へ、ともに力を合わせてすすみましょう。


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