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2019年7月11日(木)

最低賃金の焦点

審議会 多くが非公開

意見反映・透明化求める声

 最低賃金は、都道府県ごとの地方最賃審議会で議論され決定しますが、審議はほとんど非公開となっています。最賃の大幅引き上げや格差是正が焦点となるなか、審議の公開や労働者の意見を反映するよう求める取り組みが広がっています。(唐沢俊治)


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(写真)地方最賃審議会に対し、最低賃金今すぐ1000円を求めデモ行進する兵庫労連の人たち=2018年7月 31日、神戸市中央区

 最賃は、中央最賃審議会が示す「目安」を参考に地方最賃審議会が審議します。多くの県で「自由闊達(かったつ)な意見交換ができなくなる」などの理由で非公開とされています。

 全労連の集計などによると、本審と専門部会が全て公開されているのは鳥取県のみ。本審は、「目安」伝達などの会議はほとんどの都道府県で公開されていますが、専門部会の答申案の確認など重要な会議の公開は半分程度にとどまります。

 専門部会でも一部のみを含め公開しているのは青森、宮城、秋田、埼玉、福井、兵庫、和歌山、岡山、高知、長崎の10県です。

 また、審議会で労働組合の代表らが意見陳述したのは25府県。残る22都道県の多くは、意見陳述を求めても拒否されています。

 審議会は公益、労働者、使用者の代表で構成されますが、労働者委員は全て連合傘下の労組代表です。

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 山口地方最賃審議会で、公益委員を2012年~19年春まで務めた松田弘子弁護士(日弁連貧困問題対策本部委員)は「本来、全て公開されるべきです」といいます。

 山口地方最賃審議会で本審は公開ですが、具体的に金額を審議する専門部会は非公開。公開となった本審の議事録は閲覧できますが、非公開となった専門部会は要旨のみです。議事録は情報公開請求しなければ閲覧できません。

 松田弁護士は「『自由闊達な意見交換ができなくなる』などといいますが、一度も発言しないまま任期を終えた委員もいます。最賃に近い賃金で働いている非正規労働者にとって、最賃がどのように決まるのか知らされるべきです」と主張します。

陳述で青年実態訴え

 多くの都道府県の最賃は、中央最賃審議会が示した「目安」とほぼ同額です。昨年度は、24都道府県が「目安」と同額、残る23県は1~2円の上乗せでした。労働者の意見を反映させようと、審議会での意見陳述などが取り組まれています。

 愛媛労連青年部事務局長の稲葉美奈子さん(35)は昨年、地方最賃審議会で意見陳述し、非正規労働者の実態を訴えました。地域別の最賃格差の拡大で若者の県外流出が続いていると指摘。「地域別最賃制度の存在が、地域崩壊に加担しているようなものです」と述べ、全国一律最賃制と大幅な引き上げを要求しました。

 愛媛県は昨年、「目安」に2円上乗せし764円となりました。稲葉さんは「『目安』よりプラスを出したのは、私たちの運動の成果だと思う」といいます。

 松田弁護士は、審議会のあり方について「非正規労働者が多く加盟している労組や、貧困対策、社会保障拡充に取り組む組織やNPO(民間非営利団体)など幅広い立場からも委員を出したり、意見陳述や非正規労働者その他の労働者の実情を調査するなど、活性化することが必要です」と訴えます。

 参院選では、全国一律最賃制度が争点の一つになっています。稲葉さんは「私たちの最大の要求は、若者が地域に残り住み続けられる賃金水準です。地域から青年が声を上げて、全国一律最低賃金制の世論をつくるため運動を広げたい」と話しています。


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