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2019年6月7日(金)

主張

米軍基地周辺汚染

立ち入り調査を阻む壁なくせ

 沖縄県の米軍嘉手納基地や普天間基地周辺の地下水などから健康への被害が懸念されている有機フッ素化合物が高濃度で検出されている問題で、県が2016年1月に求めた基地内への立ち入り調査が3年半近くたった今も認められていません。在日米軍に関する日米地位協定を補足するとして締結された「環境補足協定」が、立ち入り調査実現の壁になっているからです。環境汚染の原因究明のために自治体が立ち入り調査を実施したくてもできない事態はあまりに異常です。

米側の通報が前提条件に

 沖縄県ではこれまで、嘉手納基地(嘉手納町、北谷町、沖縄市)や普天間基地(宜野湾市)周辺の河川や地下水、湧き水から有機フッ素化合物のPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)が、米環境保護庁が設定する飲料水の基準値を超えて検出されています。

 PFOSとPFOAは、泡消火剤の成分などとして使われてきました。環境省の説明によると、PFOSは哺乳類などの健康への影響が、PFOAについては発がん性が動物実験で認められています。このため、PFOSは国際条約で製造・使用が制限され、PFOAは最近、廃絶することが決まっています。

 沖縄県は、PFOSやPFOAが高濃度で検出されている原因が嘉手納基地や普天間基地で使用されてきた泡消火剤である可能性を指摘し、基地内への立ち入り調査を求めてきました。

 一方、日米両政府が15年9月に署名した「環境補足協定」は、環境管理の分野で日米協力を強化するとして、米軍基地への立ち入り手続きなどを規定しています。同協定は、環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合か、日本への基地返還に関連する現地調査を行う場合に、日米両政府でつくる合同委員会が立ち入り手続きを定めるとしています。

 ところが、実際は、環境に影響を及ぼす事故については、米側から日本政府に通報が行われないと、自治体は現地視察やサンプル採取の申請をできません。環境補足協定に基づいて合同委員会が定めた合意が、「立ち入り申請はアメリカ側からの情報提供が端緒」(河野太郎外相)であることを前提条件にしているためです。

 沖縄県が求めた基地内への立ち入り調査がいまだ実現しないのは、米側がPFOS・PFOAの問題を十分認識しているはずなのに通報をしないためです。

 安倍晋三首相は、環境補足協定を「日米地位協定の締結から半世紀を経て初めて(の成果)」であり、「事実上の(地位協定)改定とも評価される」などと宣伝してきました。しかし、今回の事態はそうした主張が成り立たないことを浮き彫りにしています。

地位協定の抜本的改定を

 環境補足協定に基づく日米合意が自治体の立ち入りを阻む仕組みになっているのは、日米地位協定が米軍に基地の排他的管理権を認めているからに他なりません。

 全国知事会は、地位協定を抜本的に見直し、環境法令などの国内法を米軍にも原則適用させることや、自治体の迅速・円滑な基地への立ち入りを保障することを求めています。安倍政権に地位協定の抜本改正を迫る世論と運動を大きくすることが重要です。


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