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2019年5月31日(金)

認知症の人と家族の会

介護保険に「困った」過半数

 「認知症の人と家族の会」(鈴木森夫代表理事)は、介護保険利用料(原則1割負担)に3割負担が昨年導入されるなど同制度が後退の一途をたどっているとして、「介護保険の困り事アンケート」を実施しました。介護中の家族のうち「困っていることがある」との回答が半数を超えました。寄せられた介護の実態や切実な生の声を「報告書」にまとめました。


全国アンケート

 アンケートは昨年9~10月に実施。46都道府県から289通の回答が寄せられました。回答者は、介護中の家族190件、介護経験者83件、専門職など35件(重複回答)。全体の7割が介護中または介護経験者です。

 介護サービスを利用していると答えたのは、要支援1から要介護5の認定を受けた244件中238件(98%)。介護中の家族のうち同サービスで「困っていること、不満に思うことがある」は100件でした。

 その内訳は「個別性に応じたケアが提供されない」「制度上組み合わせられないサービスがある」「利用料が高い」「要介護度が軽く認定される」など。

 この間、利用料負担が2割、3割と重くなったり、部屋代・食事代の補助の見直しなどで経済的な影響が「ある」と回答したのは、介護中の家族の約4割にあたる62件。負担増で「サービス利用を控えている」「2割負担になり、毎月赤字」「限られた収入で負担感が大きい」などの悲鳴が上がっています。

 経済的影響が「ない」の回答でも、今は1割だが、「上がったら大変だ」「夫が私にみろといいかねない。介護者の負担が多い」「今後は進行するのでだんだんと影響してくる」などと訴えています。

 専門職などの回答23件のうち、介護保険サービスで困っていることが「ある」は7割。「負担割合が重くなり、利用が制限される」「国策による軽度者のサービス利用抑制が行われている」「制度が煩雑で分かりにくい、使いにくい」など、批判的な声が並びます。

誰でもなりうる

 アンケートには、「世をあげての『認知症予防キャンペーン』がつらい。だれでもなり得る当たりまえの病気として理解してほしい」などの声も寄せられています。

 同会は「認知症の人や家族にとって、介護と暮らしは日ごとに厳しくなり、この先の不安は増すばかりだ」と指摘。「生の声を多く紹介している報告書を、暮らしやすい社会の実現のために活用してほしい」としています。

 調査結果は、「認知症の人も家族も安心して暮らせるための要望書(2019年版)」に反映させ、関係省庁に提出しました。

 介護保険サービスの利用料負担増、給付見直しなどによる経済的影響を訴える声から

【介護中の家族】

▽2割負担となり支払いがとても苦しいので、訪問介護を増やしたくても我慢している

▽2割負担で本人の年金をすべて施設利用料にあてなければならず、先行きが不安

▽3割負担になりデイサービスの回数を減らすことにした

▽介護保険の枠外の支払いが大きく、ショートステイが特に高いのでもう使っていない

【介護経験者】

▽1人暮らしがつらく、デイサービスやショートステイを利用したいが不可能

▽生活費を切り詰め、貯金をくずしてやりくりしている

▽本人の年金だけでは支払えず、家族が負担し家計を圧迫している


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