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2019年5月11日(土)

主張

ドローン禁止拡大

基地の実態隠す悪法許されぬ

 小型無人機ドローンの飛行禁止の範囲を米軍や自衛隊の基地などにも広げる「ドローン飛行禁止法」改定案が衆院を通過し、来週にも参院での審議が始まろうとしています。改定案の狙いは、米軍や自衛隊に対するメディアの取材や市民らによる監視活動を規制することです。報道の自由や国民の知る権利を著しく侵害する法案は容認できません。

国民の知る権利侵害

 2016年制定のドローン飛行禁止法は、首相官邸や国会議事堂などの周辺上空をドローンが飛行することを禁止しました。今回の改定案は、飛行禁止の対象施設に「対象防衛関係施設」として米軍や自衛隊の基地などを加えます。

 「対象防衛関係施設」は防衛相が指定し、同施設の敷地・区域とその周囲おおむね300メートルの地域上空を飛行禁止にします。「テロ対策」が口実ですが、ドローンの飛行を一律に禁止していることからメディアの取材などを制限しようという狙いは明らかです。

 改定案の国会提出をめぐっては、全国の新聞社や通信社などが加盟する日本新聞協会が「立法化に強く反対」するとした意見書を政府に提出(2月8日)し、「特に、国内法が適用されない米軍への取材活動は大きく制約され、当局の発表に関する真偽の検証もできなくなる恐れが強く、国民の知る権利が大きく損なわれる」と強調していました。

 テレビやラジオの放送局が加盟する日本民間放送連盟も「実質的な報道規制につながるおそれがある」と「憂慮」を表明する意見書を発表しています。(同15日)

 重大なのは、飛行禁止の対象が自衛隊は陸上の施設なのに対し、米軍は施設にとどまらず提供水域・空域も含まれることです。日本共産党の塩川鉄也衆院議員の質問に防衛省が明らかにしました(4月12日、衆院内閣委員会)。まさに米軍のための「特別法」です。

 とりわけ、全国の米軍専用基地面積の7割が集中し、広大な提供水域・空域が存在する沖縄は、影響が深刻です。

 沖縄の地元紙・琉球新報(4月14日付)は「名護市の辺野古新基地建設現場は米軍キャンプ・シュワブと周辺の提供水域に囲まれ、報道機関のドローンは近寄れなくなる」と指摘します。さらに、埋め立て区域の護岸付近から汚水が漏れ出している様子を市民団体がドローンによる撮影で確認したことなどに触れ、「ドローン撮影を封じれば工事の進捗(しんちょく)や基地建設による環境破壊などの実態を隠すことになる」と批判しています。

 沖縄県などの自治体が、災害時の被害状況の確認や救助活動のためにドローンを飛ばすことも妨げられることになりかねません。

米軍の要求に応えて

 政府は、「対象防衛関係施設」の管理者(基地司令官など)の同意があればドローンの飛行は可能だとしています。しかし、キャンプ・シュワブなど米軍基地上空でのドローンの飛行禁止は、17年11月にハリス米太平洋軍司令官(当時)が小野寺五典防衛相(同)に直接要請したものであることが複数のメディアで報じられています。飛行の禁止を求めている米軍が同意を与えるはずがありません。

 米軍の要求に従い、基地の実態を国民の目から覆い隠そうとする悪法は撤回しかありません。


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