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2019年4月30日(火)

スペイン総選挙 右派・国民党が歴史的敗北

社会労働党、第1党

 スペインで28日、総選挙が投開票され、下院(定数350)ではサンチェス首相率いる中道左派・社会労働党が第1党になりました。右派・国民党は得票率・議席数とも前回2016年の総選挙時比でほぼ半減させる「歴史的敗北」(地元紙)です。極右政党ボックス(VOX)が伸長し、初めて国政進出することになりました。(島田峰隆)


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 サンチェス首相は28日夜、マドリード市内での集会で「社会労働党が勝利した」「親欧州の政権をつくる」と引き続き政権を担う姿勢を示しました。

 緊縮政策反対の立場でサンチェス政権に閣外協力してきた左派ウニダス・ポデモスのイグレシアス党首は、党の議席は減らしたものの、「右派を阻止し、左派の政権をつくるという目標に照らせば十分な結果だ」と評価しました。

 社会労働党は下院で単独過半数に届かず、連立交渉に臨みます。イグレシアス氏は「連立政権に加わる用意がある」と政権入りに意欲を示しました。ただ同党と連立しても過半数には届かず、地域政党も含めて連立協議が続くとみられます。

 国民党のカサド党首は「責任ある野党となる」と敗北を認めました。ボックスは24議席を獲得。極右政党の国政進出は、1978年の民主化以来初めてです。

 下院は法案の成立などで上院に優越します。上院(改選議席数208)では、社会労働党は121議席を獲得。国民党は前回比74議席減の56議席にとどまる見込みです。


解説

反緊縮に国民の期待 極右進出、欧州影響も

スペイン総選挙で社会労働党が躍進する一方で国民党が大敗北したことは、一部の富裕層や大企業を優遇し国民を犠牲にする緊縮政策からの転換に国民が期待を寄せていることを示しました。

 国民党のラホイ前政権は教育や医療予算の削減、短期雇用の増加など緊縮政策を推進。昨年3月時点で国民の8割超が首相の辞任を求めるなど怒りが広がっていたところへ国民党の汚職疑惑が浮上し、昨年6月に退陣に追い込まれました。

 新首相に就任した社会労働党のサンチェス氏は緊縮政策の転換に着手。閣外協力するウニダス・ポデモスと合意し、教育予算の増額、付加価値税の軽減、最低賃金引き上げなどを打ち出してきました。閣僚の6割超を女性にするなど男女平等を重視しました。

 選挙戦でサンチェス氏は反緊縮政策の継続を強調し、大企業や富裕層への課税強化、経済格差の縮小や汚職撲滅を訴えました。汚職問題を引きずったまま所得税や法人税の最高税率引き下げなどを訴えた国民党と対照的な政策となりました。

 一方、極右政党ボックスが国会に進出したことは、欧州が抱える矛盾の深刻さを改めて浮き彫りにしました。

 昨年イタリアで反移民政党が参加する政権が発足したことで、地中海を渡って欧州に入る移民や難民の多くはいまスペインに向かっています。ボックスは移民急増への不安や既成政党への不満を吸収し、支持を伸ばしました。

 フランスの極右政党「国民連合」のルペン党首は早速歓迎を表明。5月後半の欧州議会選挙で伸長が見込まれる極右勢力がさらに勢いづく可能性があります。(島田峰隆)


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