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2019年4月26日(金)

きょうの潮流

 女優・渡辺美佐子さん(86)に「りんごのほっぺ」というエッセーがあります。高校「国語」の教科書にも掲載されていたので、記憶にある人もおられることでしょう▼“りんごのほっぺ”の君は、渡辺さんの初恋の人、水永龍男君。わずかの期間、東京・麻布の小学校で一緒でした。互いに意識しながらも口をきくことはなく、そのうち離れ離れになりました▼渡辺さんが消息を知ったのは35年後の1980年。テレビのご対面番組で彼を捜してほしいと頼んだところ、現れたのは水永君のご両親でした。水永君は広島の親戚に疎開。原爆が落ちた日も勤労作業で建物疎開に出かけ、そのまま戻ってこなかったのです▼その5年後、渡辺さんは原爆朗読劇への参加を呼びかけられます。送られてきた資料『いしぶみ―広島二中一年生全滅の記録』の中に“水永龍男”の名前を発見した渡辺さん。「龍男君が呼んでいる」。それから34年、今も原爆朗読劇を続ける渡辺さんの原点です▼27日公開のドキュメンタリー映画「誰がために憲法はある」で、渡辺さんは芸人・松元ヒロさんの一人語り「憲法くん」を演じます。その中のせりふ「私(憲法くん)というのは、あの戦争の後、こんなに恐ろしい、こんなに悲しいことが二度とあってはならない、という気持ちから生まれた理想だったのではありませんか」▼12歳で死んだ龍男君。彼らの無念をつづった原爆朗読劇「夏の雲は忘れない」は今年、ついに幕を閉じます。憲法守れのバトンが託されました。


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