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2019年4月22日(月)

主張

日米地位協定

国内法の適用除外の異常正せ

 沖縄県が、米軍駐留を受け入れているヨーロッパ4カ国の地位協定の内容や運用実態などをまとめた「他国地位協定調査報告書(欧州編)」を公表しました。報告書は、これらの国が米軍に自国の法律や規則を適用して自国の主権を確立させていると指摘し、日米地位協定の下で国内法が原則として適用されない日本とは大きな違いがあることを告発しています。日米地位協定の見直しは「何よりも、日本の主権についてどう考えるかという極めて国民的な問題」(報告書)であることを浮き彫りにしています。

沖縄県が欧州4カ国調査

 沖縄県は昨年から今年にかけて、ドイツ、イタリア、ベルギー、英国に職員を派遣し、▽米軍に対する受け入れ国の国内法の適用▽米軍基地の管理権▽米軍の訓練・演習に対する受け入れ国の関与▽米軍機事故への対応―を中心に調査しました。

 日本では、政府が外国軍隊の活動について「派遣国と受け入れ国の間で個別の取り決めがない限り、受け入れ国の法令は適用されない」との立場に固執し、在日米軍には国内法が原則適用されません。これに対し、調査した4カ国は「いずれの国も自国の法律や規則を原則として駐留軍にも適用」(報告書)しています。

 米軍基地の管理権に関し、ドイツでは、連邦・州・地方自治体当局の立ち入り権が明記されています。ベルギーでは、自治体の立ち入り権が認められています。イタリアでは、同国の司令官が基地に常駐し、原則どの区域にも立ち入ることができます。

 しかし、日本では、米軍は基地内で「必要なすべての措置を執ることができる」(日米地位協定)とされ、自治体の立ち入り要請を拒否、あるいは長期間認めず、大きな問題になっています。

 米軍の訓練・演習への関与はどうか。ドイツやイタリアでは、事前の承認が必要です。ベルギーでは、国防省の許可なく領空内を飛行できず、高度や時間も自国軍よりも厳しい規制を設けています。英国も、国防省が飛行の禁止や制限を課すことができます。

 日本では、日米地位協定に基づき航空法の適用を除外する特例法によって低空飛行など米軍機の横暴勝手な訓練が野放しにされているのとは、まったく対照的です。

 米軍機の墜落事故への対応も大きく異なります。日本では、沖縄県名護市のオスプレイ墜落事故など、米軍が日本側の現場立ち入りや捜査を認めない事例が相次いでいます。一方、報告書は、イタリアの検察がフライトレコーダーなどの証拠品を押収したり、英国の警察が事故現場を規制し、捜索したりした事例を紹介しています。

抜本改定の世論と運動を

 安倍晋三政権は「NATO(北大西洋条約機構)のような相互防衛義務を負っている国とそうでない国」との違いを挙げ、沖縄県の調査を「全く意味はない」(河野太郎外相)と切り捨てています。一体、どこの国の政府なのか。

 報告書は「ドイツ・イタリアでは、米軍機の事故をきっかけとした国民世論の高まりを背景に、地位協定の改定や新たな協定の締結交渉に臨み、それを実現させている」と記しています。日米地位協定の抜本改定へ、政府を動かす世論と運動がいよいよ重要です。


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