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2019年4月14日(日)

きょうの潮流

 あのウルトラマンの故郷は「M87星雲」だったそうです。それが脚本段階で誤って数字が逆になったと。光の国と呼ばれた場所は、地球から5500万光年かなた先の実在の楕円(だえん)銀河です▼人類が史上初めて撮影に成功したのはM87の中心にあるブラックホールでした。赤とオレンジ色に輝く輪の中に浮かんだ黒い穴。強い重力であらゆるものを吸い込む天体を直接見ることは科学者たちの長年の夢でした▼およそ100年前、アインシュタインが導き出した理論上の産物は宇宙の生成や進化の謎を解くカギといわれてきました。これまで間接的な観測にとどまっていたものが初めて姿を現す。そこには17の国と地域から参加した200人をこえる学者の協力体制がありました▼チリ、メキシコ、アメリカ、ハワイ、スペイン、南極。世界6カ所の電波望遠鏡を結んで地球サイズの超巨大な望遠鏡をつくり、月面に置かれたオレンジ1個を見つけるような計画。その道のりは困難を極めました▼ネットワークを調整し、まとめあげる途方もない緻密な作業。限られたデータを頼りに全体像をさぐる複雑な過程。10年越しの挑戦がもたらした成果は「天文学会の国際連合」と称されたチーム力の結晶でした▼今回の発見がすぐに日々の生活に影響するわけではないでしょう。しかし命や営みをつなぐ、われわれの存在自体にかかわります。争いではなく人類の未来のために手を携える。それはいま生の輝きや平和を求めて声をあげる人びとと重なります。


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