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2019年4月7日(日)

医療事故調査制度 18年年報

「予期せぬ死亡」377件

発足から3年余 報告数低迷

グラフ:医療死亡事故発生件数

 患者の「予期せぬ死亡事故」を対象に調査の相談や支援、分析などを行う日本医療安全調査機構はこのほど、2018年の年報を公表しました。「死亡事故が発生し、院内調査が必要」として医療機関から報告があったのは377件。一方遺族らからの相談は年々増加し、約千件に上りました。

千件超の予想が

 医療事故調査制度は15年10月に発足。当初、年間1300~2千件の事故発生報告を見込んでいましたが、制度発足以来、年400件前後で推移。昨年12月末までの3年3カ月で1234件と低迷が続いています。

 報告があった医療機関を病床規模別でみると、報告件数が最も多かったのは「300~399床」75件、次いで「100~199床」52件。800床以上の大規模病院(大学病院、特定機能病院など)は48件でした。

 遺族らから第三者機関の医療事故調査・支援センターへの相談は前年比約200件増の976件。相談内容は、「医療事故報告対象にあたるかどうかの判断」が799件で最多でした。

 医療機関での事故調査内容に不信や不満がある場合、遺族は同センターに対して調査の依頼をすることができます。遺族がセンター調査を依頼したのは20件。理由で最も多いのは「院内調査結果に納得できない」でした。

大病院が範示せ

 永井裕之・患者の視点で医療安全を考える連絡協議会代表の話 医療事故死亡者数は、10年前の厚生労働省研究班の報告から年2万人以上と推定されています。制度の一番の問題は、「予期せぬ死亡」が対象とはいえ報告数があまりにも少なすぎること。800床以上のベッドがある病院で、制度発足以来、報告数ゼロの病院は3割、600~799床の病院も半数が同様に報告ゼロです。大病院が自ら範を示して制度をしっかりリードするべきですが、それが見えてきません。事故から教訓を引き出し再発防止へつなげるには、医療界は制度の目的を現場にしっかり伝え報告数を増やすとともに、医療機関は遺族の話を聞いて、遺族が納得できる調査をすることが必要です。


 医療事故調査制度 医療事故が発生した医療機関が自ら調査を行い、原因を究明することで医療の安全の確保と質の向上を図ることを目的としています。医療に起因する予期しなかった死亡が発生すると、医療機関は医療事故調査・支援センターに報告したうえで院内調査を始め、報告書をまとめます。


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