しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年3月25日(月)

「大阪都」構想に終止符を

市の廃止・分割 「異質の悪政」くっきり

 4年前、大阪市での住民投票で否決された「大阪都」構想を、大阪維新の会が大阪府知事・大阪市長のダブル選(4月7日)で再び前面に掲げています。「都」構想とは何か。「戦後最大の詐欺」とも言われた「異質の悪政」の正体が選挙戦で改めて問われています。小西ただかず知事候補、柳本あきら市長候補の勝利で「都」構想議論に終止符を打つことがいよいよ重要になっています。(藤原直)


維新の「粉飾」通用しない

図:大阪市の4特別区への廃止分割案

 「都構想で、大阪府が都になるわけでは、ありません。都構想は、都にもならない大阪市の廃止・分割です」

 「市民の自治を守り抜く」と市長選に立候補した柳本あきら元市議は改めてこの基本的な事実を訴えています。

 「都」構想を掲げる維新陣営が、いまだに「都構想は『大阪市がなくなる』という話ではない」(松井一郎市長候補)などとごまかし続けているからです。

 しかし、市のホームページでも、維新が「都」構想と呼ぶ内容について「大阪市をなくし、特別区を設置」することだと明記。維新の足立康史衆院議員も「都構想は大阪市をなくした上で特別区をつくるんです」と国会質問で説明しています。

 大阪市在住のジャーナリストの幸田泉さんは指摘します。

 「松井氏が『民意を問う』と選挙戦に打って出るからには、せめて都構想が大阪市の廃止・分割構想だという基本中の基本は正しく市民に説明すべきです。肝心な部分を粉飾して市長に当選しても、それは市民をだましたことにしかなりません」

財源・権限を奪う

 現在の「都」構想の案の通りに大阪市が廃止されて四つの特別区に分割されるとどうなるのか。一連の権限と市税の柱であった固定資産税や法人市民税などが府に取り上げられ、自主財源の乏しい四つの半人前の自治体ができあがります。

 市に入っていた国からの地方交付税も、府に入る仕組みとなります。府に集められた財源の一部は交付金として特別区に配られますが、配分割合は決まっていません。財源の多くが府の意向に従属する仕組みとなります。

 もともと、「住民に近いところで行われる決定ほど望ましい」という「ニアイズベター」が売り文句だったのに、一般の市町村でも持っている用途地域の指定などの「まちづくり権限」は大阪府に吸い上げられ、住民から遠ざかります。さらに、分割できない事務を担わせる多くの一部事務組合が出現し、住民のチェックがききにくい仕組みとなります。

 「都構想ノー」を訴える元副知事の小西ただかず知事候補は「(都構想は)基礎自治体の能力を強めていこうという地方分権の大きな流れに逆らっている」と批判しています。

 小西氏は、維新が唱える「都」構想による府と市の「司令塔の一元化」論に対しても、21日に出演した関西テレビの番組で「府も市もそれぞれ地域住民に責任を負って意見を持つわけだから(お互いに)議論をして最適解を求めればいい」と指摘。「それがおかしいというのは『基礎自治体の意見は聞かない。俺たちが決める』ということであり、地方自治の観点からいうと極めて大きな問題だ」と批判しました。

1500億円超える費用

写真

(写真)訴える小西知事候補(左)と柳本市長候補=24日、大阪市

 さらに小西氏は「維新は都構想をやれば行政の効率化が進むというが、そんなことはない。1500億円のコストがかかる」と指摘しています。

 市を廃止して四つの特別区に分割すると、当局の試算でも庁舎整備・システム改修費など初期コストで558億円、運営コストで年41億円、組織体制の影響額(歳出増)で年21億~26億円がかかるといいます。15年間で計1523億円がかかる計算です。

 小西氏は、福祉などの市民サービスについて「分割で余計に金がかかるのに収入は変わらないので極めて不安がある」と指摘。「職員数についても大阪市の庁内から『従来の行政サービスを維持できないんじゃないか』という意見が出ている」と語っています。

府全体にマイナス

 府全体にはどんな影響があるのでしょうか。

 小西氏は、「特別区の運営に不安が生じると、大阪府がそこにサポートを投入するから、周辺に(力を)割けなくなるというマイナスの影響は出てくる」と指摘しています。

 さらに、立命館大学政策科学部の森裕之教授は「維新が、都構想で、府に財源と権限を集めて何をしようとしているのかという問題もある」と言います。

 「いま、府が力を入れているのは、国外に府民の富を吸い上げるカジノのための基盤整備であり、財政リスクの高い湾岸開発です。それで府民の暮らしがよくなるのでしょうか」

生活支援こそ対案

 柳本氏は、選挙戦で市の存続を訴え「1500億円以上もかかる市の廃止・分割をするくらいなら、いま喫緊の課題である子育てや教育、防災や減災、中小企業支援にもっとお金を使っていくべきだというのが私たちの対案だ」と強調しています。

 小西氏も「大阪の土台である中小企業・商業者はまだまだしんどい状態。子どもの貧困・虐待問題も深刻だ」と指摘。「都」構想議論に終止符を打ち、目の前にある課題に全力で取り組む必要があると、中小企業支援や学校給食の無償化に取り組む決意を訴えています。


pageup