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2019年3月18日(月)

主張

幼保「無償化」法案

安心の子育てにつながらない

 安倍晋三政権が提出した「子ども・子育て支援法」改定案の衆院での審議が始まりました。同案は、10月からの消費税率10%への引き上げと抱き合わせで、幼児教育と保育の「無償化」を実施することなどを柱にしています。「無償化」財源が、低所得世帯ほど負担の重い逆進性を持つ消費税の増税頼みであることをはじめ、保育に対する公的責任が後退する危険など、国民から疑問や懸念が相次いでいます。問題だらけの法案を推し進めるのでなく、保護者が切実に求める安心・安全の子育て支援の仕組みを拡充することが必要です。

逆進性ある消費税が財源

 10月からの「無償化」の対象年齢は3~5歳は原則全世帯、0~2歳は住民税非課税世帯です。対象となる施設は、認可保育所、幼稚園、認定こども園が中心です。認可外保育施設などは上限をつけて補助するというものです。

 幼児教育・保育「無償化」は以前から決まっていましたが、安倍政権は10%増税の時期に、実施を前倒ししました。“消費税増税分を国民に還元する売り物”の一つにしようとしています。

 なにより問題なのは、消費税を財源にしていることです。今でも子育て世帯はなにかと出費がかさんでいます。そこに消費税増税がのしかかれば暮らしが圧迫されるのは必至です。「子育て支援」だから10%増税を受け入れろと言われても、とても納得できません。

 しかも「無償化」のための費用の多くは、比較的所得の高い世帯に偏り、低所得世帯への恩恵は少ないことが明らかになっています。すでに保育園も幼稚園も、低所得世帯などへの減免措置が実施されているためです。政府自身も、保育所では減免費用の約半分は年収640万円以上の世帯に、幼稚園では費用の4割近くが年収680万円以上の世帯に向けられると試算しています。恩恵はなく増税だけかぶせられる低所得世帯が多く生まれます。給食費は実費化されるため、負担増になる世帯も出る可能性もあります。格差と不公平を広げるやり方は問題です。

 安倍政権の「無償化」方針は、保育のあり方を根本からゆがめる恐れも指摘されています。保育士の配置数や保育室の面積などで国の基準に満たない認可外施設の利用者も、補助の対象になるため、「保育の質」が保てない施設に国がお墨付きを与えることになるとの懸念の声が絶えません。

 「無償化」費用の自治体負担も、私立保育所は国が半分補助するのに対し、公立保育所は市町村が全額負担する仕組みのため、公立園の廃止・民営化にさらに拍車がかかる危険があります。安全・安心の保育を置き去りにし、保育に対する公的責任を後退させることは、国民の願いと相いれません。

認可園の増設が急務

 認可保育所に子どもが入れない待機児問題は今年も深刻です。「無償化」で希望者の増加も想定される中、安心・安全の認可保育所の増設を促進すべきです。保育士が安心して働けるための処遇改善は待ったなしです。子どもが豊かな保育・幼児教育を受けられる体制を整えることと一体で、無償化をすすめることが求められます。

 消費税10%増税は中止し、大企業や富裕層に応分の負担を求め、社会保障財源を確保する道にすすむことが急がれます。


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