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2019年3月18日(月)

“高齢化”する自衛隊

「自治体非協力」発言の背景

グラフ:防衛大学校の卒業者数と辞退率の推移
(拡大図はこちら)

 自衛隊の高齢化が止まりません。少子高齢化や慢性的な人手不足、さらに安保法制=戦争法に伴う任務の激化により、自衛官の募集・採用とも減少傾向が続いています。

 防衛省によれば、非任期制の「一般曹候補生」の2017年度の応募者数は2万9151人でした。11年には一時5万人を突破するなど、4万~5万人台で推移していました。

顕著な減少傾向

グラフ:一般曹候補生の応募数と採用数
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 任期付きの「自衛官候補生」の応募者数は、12年から減少が顕著になり、15年には3万人を割りました。年によって増減はあるものの、全体として減少傾向は顕著です。

 その結果、軍隊のあるべき年齢構造はピラミッド型ですが、自衛隊の平均年齢は1990年の31・8歳から2011年には35・6歳まで上がっています。

 さらに、1面報道のように、自衛隊幹部を養成する防衛大学校の18年度卒業生に占める任官辞退者数が、前年度から11人増え、過去10年間では最多の49人に達しました。

グラフ:自衛官候補生の応募数と採用数
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 こうした中、打開策の一つとして打ち出したのが、採用年齢の引き上げです。昨年10月、「自衛官候補生」「一般曹候補生」の上限を引き上げ、これまでの18~26歳を32歳に引き上げました。「予備自衛官」の年齢上限は36歳から54歳へと大幅に引き上げました。

個人情報の危機

 また、防衛省・自衛隊は隊員募集への自治体動員を強化。適齢者名簿の提出を自治体に要請するなどしています。採用年齢の引き上げで自衛隊が情報を求める範囲も広がるため、個人情報がより危機にさらされます。

 安倍晋三首相は、今国会で自衛官募集に関し、6割以上の自治体が「協力を拒否している」などと発言。適齢者名簿を提出しない自治体を「非協力」とみなしました。

 しかし、自治体が名簿提出に応じないのは、個人情報保護などの観点からです。法令上、名簿提出の義務もありません。さらに、防衛省によれば、名簿の閲覧・書き写しを認めている自治体が54%を占め、9割以上の自治体が何らかの形で協力しています。

 むしろ、首相が9条改憲を叫べば叫ぶほど、若者の足が自衛隊から遠のいているのが真相です。(桑野白馬、柳沢哲哉)


外征型への変貌反映

明治大学特任教授 纐纈厚(こうけつ・あつし)さんの話

写真

(写真)纐纈厚さん

 自衛官の応募減少の背景には、少子化による労働人口減のほか、自衛隊そのものの変貌があります。自衛隊が専守防衛ではなく、事実上、外征型の軍隊になり、危険な戦場に送り出されるかもしれないということを、募集対象年齢の若者たちが感じているのではないでしょうか。

 自衛隊側もそのことが分かっているので、構想する定員補充もままならない状況に非常に危機感を持っています。予算は増額されていますが、それは武器購入に使われ、給与などの人件費や募集業務の経費はかなり窮屈な予算繰りをしている。自衛隊内部には、高額武器の購入よりも人件費を増やすべきだという不満もかなり出ているといいます。

 自衛隊の任務が増大する反面、自衛官が十分補充できない問題が顕在化しているもとで、政府が自治体に自衛官募集に協力するよう圧力をかけることは、半強制、つまり徴兵制に近い形に踏み込もうという議論さえ出かねません。


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