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2019年3月17日(日)

自民党改憲条文素案「Q&A」の問題点

上脇博之神戸学院大学教授に聞く(下)

改憲で合区解消の珍論

写真

(写真)自民党の改憲条文素案Q&Aを国会議員に活用するよう求めた同党の文書

 ―自民党の改憲条文素案「Q&A」では「行政区画」等を「総合的に勘案して」議員定数を定めるのを許容し、「改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙することが可能になるように」改憲で合区を解消すると説明しています。

 議員定数を増やせば合区は解消できますから、改憲の必要はありません。参議院議員も全国民の代表であり地域の代表ではないので、県単位で議員定数を定めなければならないわけではありませんから、ブロック制や、比例代表制だけにする方法もあります。

不平等を合憲に

 改憲の狙いは、大政党に有利な1人区が多い参院選挙区を温存したいということです。合区がなされたのは、「投票価値の平等」を保障するためでした。合区を解消し元に戻せば、1票の価値が不平等になります。改憲の狙いは、この不平等を「合憲」にしたいのです。この点は、衆院の小選挙区でももくろまれています。

 「投票価値の平等」は普通選挙の要請で憲法の絶対的基準です。自民党は、これに例外を認めようとしているのですから、改憲は党利党略の大改悪です。

 ―改憲で「教育無償化が実現されるのでしょうか?」と設問をたて「経済負担が軽減されるような施策の方向性」を示すと回答しています。あたかも教育費負担が軽くなるかのような説明です。

 高等教育を無償化するのに改憲は不要です。改憲条文素案に「無償」という文言は入っていません。

教育介入したい

 改憲の本音は別にあります。自民党の改憲条文素案には、教育が「国の未来を切り拓くうえで極めて重要な役割を担う」という一文があります。その結果として、国家にとって都合のよい、つまり安倍政権にとって都合のよい教育をする学校には助成金を出しましょうという方針が採られる危険性が極めて高いでしょう。国家が教育に介入したい、というのが本音なのです。

 ―「Q&A」に書かれている理由は、どれも改憲の必要性が示されていないということでしょうか。

 自民党があげている改憲理由の建前では改憲の必要はありません。改憲の本音は別にあります。緊急事態条項で内閣も立法機関にしたいし、政権与党にとって都合の悪い衆参国政選挙の実施を延期したい。違憲の戦争法、投票価値の不平等、教育への国家介入を「合憲」にしたいのです。

 さらに「Q&A」では、集団的自衛権の行使が憲法上無制約になることや、都道府県を廃止して道州制に移行することが「合憲」になることも、一切説明されていません。

 この文書を国会議員に配布したことは、安倍晋三首相が改憲に固執していることを示しています。夏の参院選挙で改憲勢力が議席の「3分の2」を維持して改憲を実現したいという党内メッセージなのです。(おわり)


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