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2019年3月16日(土)

自民党改憲条文素案「Q&A」の問題点

上脇博之神戸学院大学教授に聞く(中)

危うい緊急事態条項

写真

(写真)自民党がまとめた改憲条文素案の「Q&A」

 ―自民党の改憲条文素案「Q&A」は、自衛隊の暴走を防ぐシビリアンコントロール(文民統制)の手段として、「自衛隊が内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする」「国会によるコントロール」の規定を設けていると弁明しています。

首相判断を追認

 憲法で首相に指揮監督を認めれば、戦前に天皇が軍隊の最高指揮権を持った「統帥権」と同じで、首相に専権的な権限が与えられ、閣議決定なしに首相独りの判断で自衛隊を参戦させられることになります。

 「国会によるコントロール」といっても、首相を支える与党が多数を占めた国会では首相の判断を追認するだけになるでしょう。

 ―緊急事態条項について「大規模自然災害などの緊急事態時」に「内閣が国会に代わって政令(緊急政令)を定める」「内閣が一時的に立法権限を代替する」と解説し、「制度の悪用やいわゆる『独裁』などの危険はありません」と言い訳もしています。

 いまの憲法でも、緊急時には対応できます。憲法54条では、衆議院解散時に緊急の必要があるときは、「参議院の緊急集会」で臨時の措置ができるとしています。法律では災害対策基本法もあります。

 「自然災害」に限定しているという説明も、うそです。国民保護法では「武力攻撃災害」という表現があり、武力攻撃の場合も「災害」に含めています。つまり緊急事態条項の発動は自然災害に限定されないのです。

悪用歯止めなし

 国民の代表機関である国会が「国の唯一の立法機関」なので、内閣は国会の定める法律に違反して政令を出すことはできません。ところが緊急事態条項は、法律に反する政令制定権を認めているので、内閣も立法機関になってしまいます。三権分立がふっとびます。

 国会に政令の事後承認権を認めていると弁明していますが、与党が反旗を翻さない限り国会議論は形式的になります。実際には内閣の悪用に対する歯止めはないに等しいのです。(つづく)


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