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2019年2月27日(水)

主張

統計と官邸関与

経過洗いざらい明らかにせよ

 毎月勤労統計の調査方式の変更をめぐって、首相官邸の関与が国会などで議論になっています。4年前に当時の首相秘書官が調査方式についての「問題意識」を厚労省側に伝えていた事実だけでなく、「官邸関係者に説明をしている」などと書かれたメールが同省担当者から発信されていたことなども分かりました。安倍晋三首相らは影響や圧力を否定しますが、国民の疑念は払しょくされません。調査方式の変更の経過を知る全ての関係者の国会招致、関連する資料の提出をはじめ、事実関係を洗いざらい究明することは、国会審議の優先課題となっています。

調査方式変更にどう影響

 不正調査が長年行われ、実態が隠されてきた毎月勤労統計の問題は解明すべき点が山積しています。その中で、いま焦点になっているのは、統計の調査方式を変える経過で、首相官邸の意向が働いたのではないかという疑念です。

 厚労省は18年1月から、中規模事業所を対象にした調査方式を、「総入れ替え」から「部分入れ替え」に変えました。その変更の議論が、官邸の意向を反映したものだったことをうかがわせる状況が浮き彫りになってきたのです。

 総入れ替え方式による15年1月の統計調査では、過去の賃金の伸び率が「下振れ」しました。同年3月末、当時の中江元哉首相秘書官(現財務省関税局長)は厚労省の姉崎猛統計情報部長に、調査方式の変更を促す「問題意識」を伝えます。厚労省は同年6月に「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を設置、調査方式の議論を始めました。同年8月に検討会は、総入れ替え方式を適当とする報告書案のまとめに入ります。ところが9月16日には中間的整理にとどめるとして、部分入れ替え方式を「引き続き検討」とする案が提示され、姉崎部長が「総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したい」と発言します。約1カ月で中身が“百八十度転換”した経過はあまりにも不透明です。

 厚労省は先週、担当者が検討会座長に送ったメールを公表しました。そこには検討結果を「官邸関係者に説明をしている段階」(15年9月4日)と記されていたほか、整理案が示された検討会前の9月14日のメールには「委員以外の関係者と調整」との言葉もありました。「官邸関係者」らが調査方式の変更にどう影響を与えたのか。

 「官邸関係者に説明」のメールが出された前日の9月3日、安倍首相は統計の調査方式などについて説明を受け、直後の参院厚生労働委員会での日本共産党の小池晃副委員長(当時)に、賃金のマイナスは事業所入れ替えの影響だったと答えています。「アベノミクス」を自慢する上で、首相が総入れ替え方式では都合が悪いと意識していたことは明らかです。官邸関与の解明は絶対に不可欠です。

ごまかしは許されない

 安倍首相らは秘書官の影響や圧力は「ない」などと主張しますが、事実経過をすすんで明らかにする姿勢がありません。厚労省などの説明も矛盾が目立ちます。首相は施政方針演説で「統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行う」と表明したはずです。官邸が調査方式の変更にどう関与したのかは、中立・独立性が求められる統計のあり方にかかわる大問題です。ごまかしは許されません。


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