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2019年2月25日(月)

自衛官募集に町内会動員

埼玉6地域以上に「回覧」

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(写真)埼玉県内の町内会で回された自衛官募集の「回覧」

 昨年12月、埼玉県加須市のある町内会の「回覧」で「自衛官募集ニュース」が各戸に回付され、自衛官募集が家庭内に及んでいることが分かりました。同県内では他の5以上の地域でも同様の「回覧」が回される例があらわれています。

 昨年5月15日付で防衛相から全国の市町村長に向けて発出された文書「自衛官募集等の推進について」は、「各市町村における募集事務に係る計画の策定及び実施」として具体的な協力の在り方を提示し、その中で町内会・青年団など地域の「各種団体に対する募集広報の協力依頼」まであげています。地域住民の自主的な団体までも自衛官募集のシステムに組み入れる状況です。安倍晋三首相は、自治体の自衛官募集への協力を強めることを新たな改憲の理由に打ち出していますが、その先取りともいえる重大な動きです。

 埼玉県内の町内会で出された回覧は、採用年齢の改正を知らせ、採用試験の実施要領を示しています。問い合わせ先として複数の募集案内所の電話番号も記されています。

 募集対象年齢にある者の氏名・住所・性別などの個人情報が自衛隊受験等の窓口となっている各地の地方協力本部に各市町村から提供されているもとで、町内会レベルでも自衛官募集に協力することは、個人や住民のプライバシーと自由に対するいっそう重大な脅威となります。またそれ自体が、自衛隊明記の改憲の推進の動きにもなります。

 軍事史が専門の纐纈(こうけつ)厚明治大学特任教授は「“かわら版”のような形で各地の町内会長による回覧が広がっている。募集業務への協力を通じて日常的・恒常的に国防意識を高める取り組みであり、現代版の総動員体制ともいうべき重大な動きだ」と警告。「背景には、自衛隊の海外派兵体制の進行で、就職先として自衛官が敏感に敬遠される状況がある。自衛隊は、強制的な要素をはらむリクルートの方策を模索している」と指摘します。

 埼玉県では昨年5月の防衛相による市町村長に対する協力要請の後、同31日に陸上自衛隊朝霞駐屯地内で「自衛官募集事務主管課長会議」が開催されました。県内63の全市町村に担当課が置かれ、会議には40以上の市町の担当者が参加。募集事務、募集広報などについて自衛隊地方協力本部からの要請が行われました。その中では「夏休み中の若者をターゲットにした広報」などとして、東京や栃木の取り組みの実例が写真で紹介され、イベントで配布する「うちわ」「ノート・バッチ等」が示されています。(中祖寅一)


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