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2019年2月22日(金)

「幼保無償化」というが…保育崩す 安倍政権

自治労連保育部会長 高橋光幸さんに聞く

自治体が100%負担 公立園存続の危機

 安倍政権が消費税10%増税を財源にすすめる「幼児教育・保育の無償化」で、公立保育園が存続の危機に立たされています。日本自治体労働組合総連合(自治労連)保育部会の部会長で保育士の、高橋光幸さんに聞きました。(芦川章子)


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(写真)高橋光幸さん

 幼児教育・保育の無償化は子育て世代の願いであり、歓迎すべきですが、安倍政権がすすめる「無償化」には多くの問題があります。その一つが“公立保育園がなくなるかも”ということです。

 理由は財源です。「無償化」にかかる市町村の負担割合は対象施設によって異なります(表)が、公立園だけは100%自治体負担のままです。これでは、公立園が多いほど自治体の負担が増えます。特別区長会の試算では東京23区だけで91億円、中核市長会の試算では中核市平均で2億500万円の負担になります。公立園の廃止・民営化が加速するのは必至です。

 国は2000年の企業参入解禁以降、公立園の民営化を進めるよう誘導してきました。

親の願い

 2004年、公立園の運営費に対する国庫負担金を廃止・一般財源化しました。06年には施設整備補助金を公立施設には適用しなくなりました。かつては全認可園の60%を公立が占めていましたが、この20年間で35%にまで減りました。保育士の非正規化も進みました。

 それでは「公立園は親たちに望まれていないのか」といえば、まったく違います。

 東京都が保護者に行った調査では、「希望していた保育園」で「公立保育園」が51・9%と断トツの1位でした。

 理由は「安心」です。自治体で違いもありますが、公立園は離職率が低く、経験豊かな人から若い人までバランスよく配置されています。ほとんどの園に庭があります。子どもたちの健やかな発達を保障する環境を、自治体の責任で整えています。

 保育園にあてる予算の削減に加え、多種多様な保育施設がつくられました。そのなかには人件費を切り詰め、過酷な労働条件で保育士を追い詰め辞めさせていく「ブラック保育施設」もあります。“保育の質”の格差が深刻化しています。

 園庭なしは当たり前で、窓なし、保育士も半分以下でいいといった、もはや「預かりさえすれば何でもいい」状態です。そんななか公的保育制度が保育全体の水準低下を押しとどめてきました。

 今回の施策は“保育の完全市場化”に向けて障害となる公的保育制度崩しという側面もあり、保育の根幹を壊しかねません。

 そもそも、安倍政権は「子ども子育て新制度」導入時(15年)、低すぎる職員配置基準の見直しなどの「質の改善」を消費税が10%になったらやると公約しました。その約束は棚上げしています。

市民運動

 一方、「公立園を守ろう」という市民の運動は全国に広がっています。公立園を新設した自治体もあります。昨年の東京・中野区長選挙では、公立保育園の全民営化に反対する野党統一候補が当選し、計画見直しに動いています。

 春の統一地方選挙、夏の参院選挙は、保育のあり方、子どもたちの命と健康、未来を左右します。私たち保育士も保護者や住民のみなさんと一緒に「公的保育を守れ」「よりよい無償化を」の声を広げていきます。

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