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2019年2月18日(月)

大阪市 官製談合疑惑

16件 最低価格ギリギリで落札 本紙調べ

電気工事 市が設定 市幹部関与か

 大阪市発注の電気工事をめぐり、官製談合疑惑で大阪地検特捜部から家宅捜索(1月24日)を受けた電気工事会社「アエルテクノス」(大阪市中央区)。本紙の調べで、2014年度から18年度にかけて計16件の入札で最低制限価格とほぼ同じ金額で工事を落札していたことが分かりました。市建設局などの幹部が関与していた疑いが強まり、吉村洋文市長の責任が問われる事態となっています。(丹田智之)


写真

(写真)アエルテクノスの本店が入居するビル=5日、大阪市中央区

 大阪地検特捜部は、アエル社の他に発注元の大阪市建設局と市契約管財局を家宅捜索するなど強制捜査をしています。市職員がアエル社の社員に入札情報を漏らし、他の業者に情報を伝えるなどして公正な入札を妨害した官製談合防止法違反の疑いです。

 アエル社など複数の業者が談合グループをつくり、市が設定した最低制限価格に合わせて入札した疑いがあると報じられています。

同額の工事も

 市の公表資料によると、アエル社が14年度から18年度にかけて制限付一般競争入札で受注した16件の落札価格と最低制限価格との差が全て0・5%未満で、完全に同額だった工事も1件ありました。16件の落札価格の合計は1億1760万円にのぼります。

 大阪市の入札に参加する市内の電気工事会社社長は「予定価格に合わせた調整(談合)には失敗のリスクがある。談合に関与していない業者が最低制限価格に近い金額で入れてしまえば仕事を取られてしまうからだ。最低制限価格を知っている人物が談合に関われば確実だ」と断言します。

 16件のうち最も高額で契約された市契約管財局発注の「東部方面管内照明設備改修工事」(17年度)の入札には37社が参加。最低制限価格2409万2千円に対し、アエル社が2409万7千円で落札しています。その差はわずか5千円です。

 市の入札担当者は「予定価格や最低制限価格を設定する際、不正防止を目的にコンピューターが無作為に選んだ99・5~100・5%の数値を掛けて算定している」と説明します。このため、最低制限価格と同じ金額を業者が独自に算出するのは、事実上、不可能です。

 アエル社が受注した16件の落札価格が全て最低制限価格とほぼ同じになっているということは、算定根拠となる情報を市職員が漏らしていた疑いがあります。

 最低制限価格に合わせた談合の背景について、前出の社長は「市役所は民間のように値引きを迫るようなことはしない。市民の安全に関わる公共施設の施工だから、安い材料を使って手抜きの工事をやられたら困るという事情がある。つまり、最低制限価格であっても公共工事は儲(もう)かる」と明かします。

政治家関係は

 今回の強制捜査を受けて、吉村市長は「捜査に全面的に協力する」と述べ、契約管財局内に調査チームを設置する方針を示しました。

 一方で、この社長は「談合の背景に市職員に対する政治家の圧力があった可能性は否定できない」と指摘しています。

 アエル社は本紙の取材に、「責任者がいないので答えられない」としています。


 予定価格と最低制限価格 国の機関や地方自治体など工事の発注者が競争入札によって企業などと契約を締結する際、落札価格の上限として予定価格を設定します。予定価格を下回る入札をした企業のうち最も低い金額を提示した企業に落札させます。これより高い入札額は無効です。最低制限価格は落札の下限にあたり、これを下回ると失格となります。


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