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2019年1月31日(木)

主張

国立大学交付金

教育研究の基盤崩す傾斜配分

 国立大学協会の山極寿一会長(京都大学総長)が、2019年度政府予算案を批判する声明を発表しました(23日)。国立大学の人件費などに充てる運営費交付金のうち、政府の評価指標で傾斜配分する割合を現在の3%から10%(1千億円)に拡大することは、「財政基盤を不安定にするものであり、極めて残念」と表明したのです。

競争に“負ける”と減額

 新たに導入した評価指標は、「経営改革」を競わせるために財務省が持ち込んだものです。評価指標にもとづく大学間競争に“負けた大学”は、交付金が減額されます。国大協は強く反対しましたが、昨年12月20日の総合科学技術・イノベーション会議で安倍晋三首相の主導により決定しました。文部科学省が提案していた交付金の配分ルールを首相が変えたのです。

 そもそも交付金の配分ルールを6年の中期目標期間の途中で変更することは、大学の自主性・自律性を高めるとした国立大学法人法の趣旨に反します。入り口(中期目標・計画策定)と出口(中期目標期間後の評価)以外は口を出さないとした政府の国会答弁すら反故(ほご)にする姿勢は許されません。

 しかも、政府が押し付けた評価指標による競争によって、大学の教育研究が向上する保証はどこにもありません。

 例えば、40歳未満の教員を増やすことを指標にした「若手研究者比率」は、任期付き教員もカウント対象にされるため、40歳を超えた研究者の雇い止めが横行するのではないかと危惧されています。

 「教員1人当たり外部資金獲得実績」との評価指標は、民間企業からの投資を増やそうとするものですが、大企業の姿勢が変わらない限り困難と言わざるを得ません。経団連は16年の提言で、共同研究相手である大学などが企業に対してその対価を支払うよう求める権利(不実施補償)を放棄するよう求めています。日本の大企業は、大学の知的財産を活用しても、対価を払いたくないのです。外部資金獲得が難しい現状の中で、それを交付金減額の口実にしようとする政府のやり方は問題です。

 「会計マネジメント改革」という評価指標は、学部ごとの予算や決算の公表を強いるものです。医学部や理工系学部にコストがかかっていることが明らかになり、これらの学部の学費値上げの口実にされる恐れがあります。

 重大なのは、傾斜配分の対象をさらに拡大し、最終的には交付金全体を傾斜配分にしようとしていることです。これでは、交付金は安定財源ではなくなります。大学改革を誘導する重点的な補助金も、細ってきています。

切り捨ての政策やめよ

 こうしたもとで、大学が教育の高度化を図ろうとすると、安定的財源は学費値上げで確保するしかありません。実際、東京工大、東京芸大が大幅な授業料値上げを決定しており、これに続いて値上げを検討する国立大学が広がっています。他方、値上げに踏み切ることができない地方国立大学は、存続そのものが危うくなります。

 安倍政権の狙いは、自己収入を増やせる大学だけを生き残らせ、それ以外は切り捨てて、国立大学の数を減らすことにあります。

 大学への介入を強め、「学問の自由」を脅かす安倍政権に大学行政を担う資格はありません。


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