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2019年1月16日(水)

きょうの潮流

 あれは高校生の頃だったか。歴史の先生から一冊の本を勧められました。それが法隆寺は聖徳太子の怨霊を鎮めるための寺ではないかと主張した梅原猛さんの『隠された十字架』でした▼説の正否よりも、常識や通説にとらわれない歴史の見方や文化を創造するおもしろさを感じてほしかったのでしょう。独自の視点で論じた「梅原日本学」は学界の枠をこえ、社会に大きな論争を巻き起こしました▼学問とは発見―。梅原さんが学生に講演したことがあります。「おかしいことをおかしいと思わなくては学問にはならない。子どものような心と、真理に対する誠実さと孤立する勇気、そして執念が独創的な仕事をつくる」(『少年の夢』)▼戦中派の最後の世代と口にしていたように20代での死を覚悟し、特攻隊にも志願しました。人間を不幸にする戦争体験が物事の本質を問う哲学の道を歩むきっかけになり、戦後一貫した「平和憲法を守れ」の姿勢につながりました▼「九条の会」を呼びかけた一人として、人類が生き延びるための理想を守るために声をあげ続けました。日本ペンクラブの会長として理念なき教育基本法の改悪を「あまりにも知性と品格を欠いている」と真っ向から批判したことも▼つねに問題意識をもった発言には人類の未来にたいする希望が込められていました。「いまの時代は、きみたちに夢見ることを求めている」。梅原さんは自身の思いを若者たちに託します。「新しい文明をつくっていく大きな夢をもってほしい」


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