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2019年1月13日(日)

主張

勤労統計の偽装

国民をまたも欺いた責任重大

 またも安倍晋三政権下で、統計データの大規模偽装が発覚しました。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」が長年にわたって誤った手法で行われていた上、そのことが隠され続けていたのです。同統計は、国の統計の中でも「基幹統計」と法律で定められた極めて重要なものです。しかも、このデータは雇用保険や労災保険の算定をはじめ国民生活の多岐にわたる分野で使われており、今回の偽装による被害と影響は、計り知れない規模で広がっています。まれにみる異常事態という他ありません。被害の補償とともに徹底した原因解明と責任追及が急がれます。

統計への信頼を失わせる

 毎月勤労統計は、賃金、雇用、労働時間などの実態を示す大切な指標です。今回の偽装は、従業員500人以上の事業所は全数調査をしなければならないのに、東京都については2004年から約3分の1の抽出調査しかせず、それを非公表にし続けただけでなく、「データ補正」のソフトまでつくって、隠ぺいを重ねてきたなどというものです。誤った手法がとられた結果、賃金の動向などは実態とかい離していました。

 毎月勤労統計は、国勢統計などとともに56ある「基幹統計」の一つです。景気や雇用の動向の算出に使われるほか、国内総生産(GDP)の発表の際にも活用されているだけに、その偽装は、国の統計そのものへの信頼を根本から失わせる事態です。

 国民の暮らしへの実害はあまりに深刻です。毎月勤労統計は、雇用保険の失業給付、労災保険の休業補償給付、育児休業や介護休業の給付など、国民生活を支えるさまざまな制度の給付額算定のベースにされています。偽装によって賃金水準が低く出たため、それらの制度の給付額も減少しました。厚労省によれば、給付不足がのべ1973万人、推計で総額約537億5千万円にのぼります。

 職を失い休職中の人や、労災で働けなくなった人など、支援が切実に求められていた人たちに対し本来支給されるべき金額が、政府の統計偽装によって減額されたことは重大です。

 安倍政権は、「追加給付」を行うとし、19年度政府予算案を修正するとしています。しかし、賃金台帳は3年しか保存されておらず、正確な給付確定はできません。推計による「追加給付」しかできなくなっています。しかも対象者のうち1000万人以上の住所は不明で、すでに死亡した可能性のある人もいるといわれます。事態を長年放置し、是正に動こうとしなかった責任がどこにあるのか。絶対にあいまいにできません。

安倍政権の対応問われる

 問われるのは安倍政権の対応です。昨年1月にデータ補正をした経過を見ると一昨年時点で問題を把握していたことは明らかです。昨年6月に現金給与総額が高い伸び率を示した際、その変化を疑問視する声があったのに、突っ込んだ検討はされませんでした。組織的隠ぺいの疑いも濃厚です。当時厚労相だった加藤勝信自民党総務会長の国会招致は不可欠です。

 今回の偽装は、「森友・加計」問題、裁量労働制など昨年の国会で大問題になった安倍政権の改ざん、隠ぺい体質を改めて浮き彫りにしています。徹底糾明に向け、国会の果たす役割は重要です。


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