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2019年1月11日(金)

きょうの潮流

 スポーツ選手の引退会見は、どことなく現役への未練がにじむことがあります。吉田沙保里さんのすっきりと穏やかな表情から迷いは感じられませんでした▼五輪と世界選手権をあわせて16連覇、206連勝。前人未到の金字塔を打ち立てながら、日本と世界の女子レスリングを引っ張ってきました。「すべて、やり尽くした」。33年間に及んだ競技生活の区切りもプレーぶり同様に決然としていました▼代名詞の“高速タックル”で攻めのスタイルを貫きました。「相手に研究されても、それを上回る」。他を圧倒する瞬発力と体のしなやかさはもちろん、みずから飛び込んでいく勇気や、人一倍の向上心が競技への情熱を支えてきました▼飽くなき勝利への飢え。いくつものメダルのなかで、しかし彼女は、リオ五輪の銀メダルを一番の印象にあげました。悔し涙の表彰台で負けた選手の痛みとともに、こうやってたたかう仲間がいたからこそ自分も頑張れてこれたんだと気付かされ、成長させてくれたと▼スポーツ界の国民的な存在として、競技の枠をこえ敬い慕う選手も多い。パワハラや暴力が後を絶たないなか、教え伝える側に回る彼女への期待、背負う役割はとても大きい▼いろいろなことを学び、いろいろな人と出会えたというレスリング人生。タックルには困難な問題や仕事に果敢にとりくむという意味も。「第二の人生を明るく笑顔で元気に」。次に挑むものが何であれ、肌で感じとり、培ってきたものをぜひ生かしてもらいたい。


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