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2019年1月4日(金)

きょうの潮流

 穏やかな波間にきらめく陽光。三陸の海に年が明けました。岩手・釜石市の鵜住(うのすみ)神社では伝統の祝いの虎舞がふるまわれ、新年の意気込みを示しました▼神社から町を見渡すと、根浜(ねばま)海岸の近くに白い大きな屋根が見えます。日本で今年開催されるラグビー・ワールドカップ(W杯)の会場となる釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムです。象徴ともいえる屋根は羽ばたきと船出を表しているといいます▼東日本大震災で全壊した小中学校の跡地に新設され、昨夏オープンしました。鉄とラグビーのまちにW杯が来る、世界中からファンを迎え入れる―。実現への歩みは子どもたちや被災者の心にひと筋の希望と夢をもたらしています▼一方で、釜石市で最も多くの犠牲者を出した鵜住居地区はいまだに更地も目につきます。建物が新しくなって道路や鉄道が復旧しても、人が戻らず、活気が失われている多くの沿岸地域と同じように。震災からもうすぐ8年。地方の過疎化や疲弊が復興に重くのしかかっています▼神社の隣につくられた真新しい小中学校。校庭で子どもを遊ばせていた40代の男性は、父親を津波で失い、復興住宅でくらす母に会いに仙台から帰省してきたと。「W杯は一過性のこと。住みつづけるには生活の基盤を再建しなければ」。生まれ育った地の先行きを案じていました▼さまざまな災害で日常を奪われた人たちは、いまや各地にひろがっています。災害から命とくらしを守るとともに、生きる希望の光が、すべての被災者に届く年に。


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