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2018年12月23日(日)

政治考

改憲狙い“草の根動員”

安倍政権、自民案提示に執念

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(写真)安倍政権の改憲発議は許さないと国会にむけてコールする人たち=11月3日、国会正門前

 安倍政権と自民党による臨時国会への改憲案提示強行を、全国の草の根の力と国会での野党共闘によって食い止めたことは重要な成果でした。もし12月6日の衆院憲法審査会で改憲案提示が強行されれば、史上初めての自民党による改憲案の国会提示という重大事態になっていました。

 しかし、安倍政権と自民党中枢からは改憲での巻き返しへ執念を示す発言が相次いでいます。

「次期国会」照準

 安倍晋三首相は国会閉会にあたっての記者会見(10日)で、昨年5月3日に自身が日本会議系改憲集会に寄せたビデオメッセージで「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」としたことについて問われ、「今もその気持ちには変わりはありません」と明言。9条への自衛隊明記をはじめとする自民党改憲4項目を臨時国会に提示ができなかったことへの「受け止めを」と問われると、「まずは具体的な改正案が示され、国民的な議論が深められることが肝要」などとし、次期通常国会での改憲案提示に飽くなき執念を示したのです。

 翌11日には、日本会議国会議員懇談会の中心メンバーでもある同党の萩生田光一幹事長代行が「通常国会(の会期)150日間の定例日を有効に使い、4項目を提示したい」と具体的に言及。安倍首相に近いとされる吉田博美参院幹事長も「次期通常国会ではしっかりと(憲法審査会で)提案し、議論していきたい」と述べました。安倍首相を先頭に、改憲突破へねじを巻いています。

国民投票を意識

 17日には同党の下村博文憲法改正推進本部長がラジオ番組で「ぜひ国会における憲法審査会で、平場で国民にわかる形で議論することが重要」と発言。20日には首相側近の加藤勝信総務会長が4項目改憲案について「憲法審査会は国会にあるわけだから、そこでしっかり議論していただく」として、来年の通常国会への提示を目指す考えを示しました。首相の盟友・側近が“巻き返し”へいっせいに改憲案提示を呼号する動きは、まさに「改憲シフト」の発動です。

 下村氏は、全国289の小選挙区支部で日本会議と連携しながら地域の憲法改正推進本部設置を進めるよう要請(10月29日)。地域の同本部を基礎に「国民投票に向けて連絡会をつくりたい。202(支部)までめどが立った。まだ90弱残っているが何とか年内に達成したい」(5日、日本会議系集会)と発言するなど、国民投票を意識し草の根対決を挑んでいます。

安倍改憲阻止へ結束 3000万署名で包囲さらに

公明も後押し

 「改憲に慎重」といわれる公明党の幹部からも見過ごせない発言が出ています。衆院憲法審査会の強行開催が見送られた6日、同党の北側一雄憲法調査会長は会見で「(改憲案が)提示されても、改憲論議が一気に進むわけではない」と発言。さらに「憲法審はそれぞれの立場から憲法について意見を交わす場だ。自民党としてのイメージを示すこと自体がだめという理由がわからない」とし、審査会開催と改憲案提示を拒否する野党を攻撃しました。北側氏の発言は“改憲案の提示自体は構わない”というものです。

 北側氏は、自民党の高村正彦元外相と連携し、2014年の集団的自衛権行使容認の「閣議決定」や翌15年の安保法制=戦争法とりまとめを推進した公明側の責任者です。高村氏は昨年議員を引退しましたが、党憲法改正推進本部最高顧問という要職に残り、北側氏とのパイプを生かして公明党との水面下調整を続けています。

 また北側氏は11月29日の会見で、改憲のための国民投票法改定案について「次の通常国会ですぐに採決できるといい」とも発言しています。自民党は、まずテレビCM規制などを内容とする同法の改定で、憲法審査会開催に野党を巻き込みたいという思惑で、北側氏の発言はこれを後押しした形です。

 10日に会期末処理のために開かれた衆院憲法審査会の散会後、自民党の新藤義孝筆頭幹事は記者団に、審査会強行開催の経過について野党に「おわびした」と言いながら、「前国会から膠着(こうちゃく)していた問題がようやく解消して正常化した」と強弁しました。

 強行開催を主導しながら、その破綻を前にして手のひらを返すように“野党との協調”を装う―。次期通常国会で国民投票法改定から審査会を開こうという狙いが透けて見えます。同日の同幹事懇談会では日本民間放送連盟からCM規制問題などでの聞き取りも行いました。

 しかし、日本共産党、立憲民主党、国民民主党など6野党会派は、与党が提出している国民投票法改定案の継続審議にはそろって反対しました。

補完勢力動員

 5日に国会近くで開かれた日本会議系の改憲集会で日本維新の会の馬場伸幸幹事長は「(憲法審査会の開催を)妨害しているのは私たちを除く野党6党だ。野党のケツをたたくのは維新の会に任せていただきたい」と発言。長島昭久衆院憲法審査会委員(会派・未来)は、「今は(改憲へ)千載一遇のチャンス。これほど憲法改正を進める首相はなく、衆参両院で3分の2を確保しており、野党の中にも憲法改正推進の塊がある。何十年に1度の惑星直列のような今を脇に置けない」と檄(げき)を飛ばしました。

 安倍改憲は強権主義の破綻で矛盾を深めながらも、なお、来年の通常国会で改憲論議の「扉をこじ開ける」(古屋圭司日本会議国会議員懇談会会長、5日)と躍起です。

 他方、共同通信が15、16両日に実施した世論調査では「9条を含めて(憲法)改正し、2020年施行を目指す方針」について「反対」が52・8%に達したのに対し「賛成」は37・6%でした。安倍首相の改憲推進に賛同する論調の「産経」の世論調査(11日付)でも、自民改憲案の国会提示ができなかったことについて「良かった」が55・4%など、強権手法で立憲主義破壊を進める安倍政権のもとでの改憲に、国民の強い警戒感が示されています。

 安倍改憲阻止の3000万人署名運動のさらなる前進をはじめ、草の根でさらに幅広く包囲するたたかいが続きます。

 (中川亮、中祖寅一、日隈広志)


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