しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年12月16日(日)

きょうの潮流

 生々しい映像がまだ頭の中にこびりついています。立ち尽くす部員を一方的に殴り、蹴る。11月、名古屋市の私立高校野球部で発覚した監督の暴力行為。テレビで繰り返し映像が流れました▼「指導するうちに感情的になってしまった」。理性のかけらもないその姿には、指導者を名乗る資格すらありません▼今年のスポーツ界は暴力、パワハラ、不祥事が相次ぎました。レスリング、アメフット、ボクシング…。多くがトップスポーツでの出来事ながら、問題はそこにとどまりません。子どもをめぐるスポーツや部活動も含め、根は深い▼そこに一石を投じる一冊が出ました。プロ野球、横浜DeNAの筒香(つつごう)嘉智選手の『空に向かってかっ飛ばせ!』(文芸春秋)です。2015年、ドミニカ共和国を訪れ、「野球を楽しむ原点」をみつめ直した筒香選手は、勝利至上主義に侵された日本の実態に気がつきます▼子どもから高校にいたるまで、「野球が指導者の実績や功績」を示す手段となり、暴力やパワハラまがいの指導が起こる。「大人の顔色ばかりをみて、自分で考える習慣が身につかない」。選手の酷使など「最悪の事態を引き起こす」弊害も指摘し、勝利より子どもの成長に軸足を移すべきだと提案します▼指摘の多くが野球のことでありながら、それにとどまらない意味があります。指導者のあり方など手探りが続く日本のスポーツ界。どう考え、変えていくべきなのか。筒香選手の提言が、一つの道しるべとなる気がしてなりません。


pageup