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2018年12月9日(日)

きょうの潮流

 貧しくも平和に暮らしていました。みんながひとつの家族のように。このまま続くと思っていた彼女の生活は4年前の夏にばらばらに壊れてしまいました▼イラク北部のヤジディ教徒が住む小さな農村。そこに住んでいた当時21歳の学生だったナディア・ムラドさんは過激組織ISに襲われました。愛する家族の死を目の当たりにし、自身も性暴力にさらされる日々を強いられました▼「女の人質と奴隷は単なる所有物であるから、売る、買う、または贈り物にすることも許される」。性奴隷として扱うISのもとでレイプされ、殴られ、また別の戦闘員に売り渡される。その時間の1秒1秒がゆっくりとした痛みを伴う死の一部でした。肉体と魂の▼捕らわれの身から逃れたムラドさんはしかし、沈黙を選びませんでした。自分が人間であるという感覚さえ失いかけた体験を話し続け、人権活動家として性暴力の根絶を国際世論に訴える。その勇気ある行動に今年のノーベル平和賞が贈られました▼すべての人間は生まれながらに基本的人権を持っている。それを初めて公式に認めた世界人権宣言が明日で70周年を迎えます。あらゆる人と国が達成しなければならない共通の基準は、人権の世紀といわれる21世紀の課題です▼宣言が採択されたパリにはいま、薬きょうで作られた巨大な女性像が置かれています。抑圧から人びとを守るために、ムラドさんは自伝の題名に思いを込めました。『THE LAST GIRL(私を最後にするために)』


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