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2018年12月4日(火)

主張

「入管法」参院審議

劣悪労働横行に拍車かけるな

 外国人労働者の受け入れ拡大のための出入国管理法改定案をめぐる国会の動きが緊迫しています。安倍晋三政権は今国会成立にあくまで固執し、採決強行に突き進もうとしています。まったく乱暴です。参院審議は始まったばかりです。衆院では審議が尽くされないまま与党が採決強行を重ね、その暴挙に批判が集まったというのに、安倍政権には、みじんの反省もありません。審議の中では野党の追及で、外国人労働者の人権を侵害する劣悪労働のまん延に拍車をかける改定案の危険性が浮き彫りになっています。徹底審議で廃案にすることが求められます。

「安価な労働力」扱い

 改定案は、新在留資格「特定技能」を設け、「人手不足」とされる業種に多くの外国人労働者を受け入れることなどが柱です。しかし、対象業種など肝心な中身は法案に書かれず、政府に“白紙委任”する仕組みです。国のあり方や針路にかかわる重要な改定案なのに、とにかく政府に一任しろという法案の構造自体が大問題です。

 そもそも安倍政権は、日本で働く外国人労働者を、生身の人間として扱うのでなく「安価な労働力」としかみなしていないことが国会審議を通じて明らかになっています。それを象徴するのが、外国人技能実習制度をめぐるデータねつ造と実態隠しです。同制度の下で、失踪する実習生が昨年7000人超と深刻化していることなどについて、政府はまるで実習生が勝手に仕事を投げ出したかのような印象の資料をまとめ、国会で大臣が虚偽答弁を繰り返しました。

 しかし、実際は野党の調査などで明らかになったように、最低賃金違反や暴行・パワハラ・セクハラなどの違法・無法がまかり通っていたのです。政府の隠ぺい体質が厳しく問われます。重大なのは、安倍政権が技能実習制度を温存し、新制度で積極的に活用するとしていることです。深刻な実態をたださず、新制度を開始すれば、外国人の「使い捨て」がますます横行することにしかなりません。

 さらに日本への「出稼ぎ労働」の抜け道になっている留学生の問題も深刻です。留学生には、アルバイトなど「資格外活動」は週28時間までしか認められないのに、多くは制限を超えて働いているのが現実です。日本で稼げると聞いて多額の借金をして来日したものの実際は最賃ギリギリのため、借金返済などのためいくつもの職場をかけもちして働かざるをえなくなり、過労で健康を壊し、命を落とす人も生まれています。安く使うためだけに留学生をかき集める日本語学校も存在します。ブローカーが暗躍し荒稼ぎする例も後を絶ちません。

 ところが政府はまともな実態把握をしていません。それどころか自民党は、留学生を「労働力不足」対策としてさらに使うことまで提言しています。人権置き去りの、あまりに危険な思惑です。

共生社会への議論こそ

 外国人労働者を「雇用の調整弁」「交換がきく機械の部品」のようにみなす発想から決別すべきです。深刻な「人手不足」となっている業種の低賃金と過酷労働をそのままにして、とにかく外国人で補おうという姿勢そのものが安易で無責任です。受け入れ拡大の結論ありきでなく、安心の共生社会実現へ、徹底した議論こそ必要です。


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