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2018年11月23日(金)

きょうの潮流

 噺の(はなし)舞台は閻魔(えんま)の庁です。過酷なノルマで毎日夜中まで仕事に追われ、過労自殺した青年が極楽行きか地獄送りかの裁きを受けにやってきます▼審査役の鬼たちが「まるで鬼やなー」とつっこむほどの働かせ方と会社の冷たい対応。現世を映し出す鏡に現れた母親のやつれた姿と青年の切なる願いに、鬼の目にも涙が―。過労死をテーマにした創作落語「エンマの願い」です▼水と油のような取り合わせが、なぜ実現したのか。その過程をルポした毎日新聞の連載と、演じた桂福車さんや落語作家・小林康二さんの話が『過労死落語を知ってますか』(新日本出版社)と題した本になりました▼遺族の思いもくみ上げながら練り上げた演目。そこには、笑いと温かさのなかに理不尽な死への怒りが込められています。今年2月に亡くなった福車さんは、共鳴や感激は理屈ではなく文化の成せる力、それを活用しながら多くの人にメッセージを伝えたいと▼18年版の過労死白書からは教職員やIT、外食産業、医療などで異常な長時間労働の実態が浮かび上がりました。精神障害も過去最多と深刻さを増しています。まじめに働くものが追いつめられる一方で、何十億円もの報酬をもらう経営者や莫大(ばくだい)な利益をため込む企業の姿があります▼今月は過労死防止の啓発月間。きょうは勤労を尊び感謝する日です。人間の喜怒哀楽を描く落語のように、生きる喜びを感じながら働きたい。過労死のない社会を呼びかける、すべての人びとの声が実る世の中を。


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