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2018年11月14日(水)

きょうの潮流

 「私、絵と結婚するの」。荒廃のなかで新しい国づくりに多くの人びとが動き始めた東京。そこに、つば広の帽子をかぶった一人の女性が上京しました▼人間として、絵描きとして自立したい。心の内に燃えるような思いを秘めた、27歳のいわさきちひろです。夫が自殺した最初の結婚、満蒙開拓団の生活や空襲で家を焼かれた戦争体験…。忌まわしい過去から決別し、日本共産党員として自分の信じる道を歩もうと▼彼女の激動の日々と、それを取り巻く若者たちの群像劇を前進座が公演しています。ちひろ生誕100年を記念して。節目の今年は東京・練馬や安曇野にある美術館をはじめ、多彩な催しが各地で開かれてきました▼子どもが幸せでいることに何よりも喜びを感じ、子どもが不幸になることを許さなかった、ちひろ。生前こんな言葉を残しています。「平和で、豊かで、美しく、可愛(かわい)いものがほんとうに好きで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます」▼子は社会を映し出す鏡。いまも子どもの貧困や虐待が社会問題となるなか、彼女の絵は没後44年の時間がたっても色あせず、みるものの心をあたたかく包みます。大切なものを守るという覚悟とともに▼平和の願いをひろめる毎年のカレンダーやヒバクシャ国際署名にも使われている、愛らしい絵。描き続けた子どもの姿は“いのち”の象徴でした。たとえ絵が歴史になろうとも、絵筆に込めたちひろのゆるぎない思いは、これからも生きていきます。


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