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2018年11月8日(木)

論戦ハイライト

圧巻の追及 政府、答弁に窮す

暮らし・外交 深刻な実態ただす

参院予算委 小池書記局長の質問

 7日の参院予算委員会で日本共産党の小池晃書記局長は、外国人労働者の受け入れ拡大問題や消費税増税、地位協定問題について、安倍晋三首相らをただしました。


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(写真)質問する小池晃書記局長=7日、参院予算委

外国人労働者受け入れ

失踪者4279人(1~6月)低賃金で

新資格の意義 法案になし

 安倍政権は、「人手不足解消」を理由に、外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改定案を2日に国会提出。来年4月施行を狙っています。小池氏は、外国人技能実習制度の深刻な実態を是正しないまま拡大しようとする政権の姿勢をただしました。

 小池氏は、技能実習生の失踪が2017年に7089人と過去最高に達し、今年はすでに4279人(1~6月)に上っていると指摘(表)。法務省調査では、失踪理由の87%が「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」だと告発し、17年の労働基準監督署の監督では70・8%に法令違反があったと明らかにしました。

 小池氏は、「技能実習制度では職場選択の自由も居住の自由もない。耐えかねて失踪し、捕まったら入管施設で拘束される。労働基準法や最低賃金も守られず、守らせるための体制もないに等しい」として、安倍首相に迫りました。

 小池 この現状をたださずに受け入れを拡大すれば、事態はいっそう深刻になり、国際的な批判を招くのではないか。

 首相 確かにそういう状態があることは認めるが、新制度では問題が起きないよう適切な支援を行う。

 小池 来年4月に、どうして解決できるのか。深刻な実態に対する認識が甘い。

 小池氏は、在留期間にかかわって、改定案は、「特定技能1号」を原則1年更新としていると指摘。「人手不足になれば受け入れ、充足すればやめるものだ」と告発しました。

 小池 外国人は雇用の調整弁ではないか。

 首相 受け入れを停止しても、在留資格を直ちに打ち切って帰国させることは考えていない。

 小池 雇用契約が打ち切られたら在留資格の更新も認められない。国家による整理解雇だ。しかも職場を追われるだけでなく、帰国させてしまうという、これほどの人権侵害はない。

 その上で、小池氏は、改定案に制度の根幹部分が明記されず、法案成立後の閣議決定や省令に委ねられている問題をめぐり、「新たな在留資格をつくる意義さえ、法案に書かれていない」と追及しました。

 山下貴司法相は、人手不足解消が意義だとするばかり。小池氏は「国の針路を左右する重大な制度だ。まず意義があって法律をつくり、法律に基づいて基本方針を決めるのが、あるべきやり方だ」と強調しました。

 小池氏は最後に、在ベトナム日本大使館後援の日越交流会で、大使館関係者が「ベトナム、そして日本において、悪徳ブローカー、悪徳業者、悪徳企業がばっこしており」「本問題は大使館にとって最重要課題の一つだ」とあいさつしたことを取り上げました。

 小池氏は「深刻な実態の解決は政府にとっても最重要課題のはずだ。解決せずに拡大するなど断じて許されない」と批判し、改定案の撤回を求めました。

消費税10%

「ポイント還元」「商品券」

愚策やめ増税中止こそ

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 消費税増税が家計消費と経済に与える影響は極めて深刻です。2014年4月に消費税率を8%に引き上げる増税が実施されましたが、その後家計消費はひと月も増税前の水準を上回ったことはありません。(グラフ上)

 小池氏は、内閣府が発表している「実質民間最終消費支出」の推移では、東日本大震災後の3年間で震災前と比べて消費は20兆円近く伸びたにもかかわらず、消費税増税後の4年間では2兆円しか伸びていないことをパネル(グラフ下)で提示。「消費税増税は大震災をはるかに上回る消費への打撃になり、いまだに回復していない」と指摘しました。

 小池 こんな時に増税すれば、家計消費への打撃になり景気に深刻な影響を与えることは必至だ。

 首相 (前回の増税が)われわれの当初のもくろみよりも大きく消費に影響を与えたという認識はもっている。

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 首相は増税が与える経済への打撃を認める一方で“今回は増えた税収の半分を社会保障として国民に還元する”などと語り、あくまで増税に突き進む姿勢を見せたため、小池氏は「前回も全額社会保障に使うと言っていたが、これだけ(消費は)落ち込んだ」と反論。政府が景気対策として打ち出している、中小小売業支援策の「ポイント還元」や低所得者支援策の「プレミアム商品券」についてもただしました。

 「ポイント還元」とは、中小小売業でクレジットカードを利用した人を対象にしたものですが、中小小売業ではそもそもカード決済を行っていないところが多いのが実態です。カード会社が課す手数料は、決済額が少ない中小店舗ほど高いという問題もあります。小池氏は「こんな制度は中小小売業の支援どころか、大変な迷惑だ」と追及。さらに低所得者が2万5000円の商品券を2万円で購入できるようにすると言われている「プレミアム付き商品券」については、いずれ買おうと思っていたものを商品券があるから買う「先食い」などもあり必ずしも新たな消費を生むわけではないと指摘。「商品券を使って買い物をすればレジで『私は低所得者です』と言うようなものだ」との声があがっていることも紹介し、「増税分を戻すぐらいなら、最初から増税をやめればいい。愚策はやめるべきだ」と主張しました。

 複数税率導入で必要となるインボイス(適格請求書)制度も大問題です。免税事業者はインボイスを発行できず、取引から排除されて存亡の危機に立たされる恐れがあります。

 しかし安倍首相は、インボイス制度導入までに4年間の準備期間と6年間の経過措置を設けることをあげて「事業者への影響を極力緩和できる」などと発言。小池氏は「影響が出ることは認めざるを得ない。しかし、先送りしても影響はある。中小業者、商店街、雇用契約を結ばずに働いている方も全部対象になってくるわけで、被害が大きく出てくる」と批判しました。

 消費税を押し付ける一方で、株で大もうけしている超富裕層や大企業には優遇税制があります。

 小池氏は、株式譲渡益や配当益に対する税率が20%に抑えられているために年間所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がるという“逆転現象”が起きていると指摘しました。

 小池 OECD(経済協力開発機構)や経済同友会も金融所得税率の引き上げを求めている。財務省も検討していたはずだ。なぜ見送るのか。

 麻生太郎財務相 財務省のなかでいろいろ検討させていただいているのは事実だ。

 首相 慎重かつ丁寧な検討が必要と考えている。

 小池 消費税を問題だらけの対策のなかで増税するのではなく、こういったこと(富裕層優遇の税制)を見直すことこそ最優先課題だ。消費税増税の中止を強く求める。

日米地位協定

他国と比べてあまりに屈辱的

外相の当然視 「恥ずかしくないのか」

 全国で在日米軍の事件・事故が相次ぐ中で、日本側の調査権や国内法を無視した日米地位協定の改定を求める声が高まっています。

 小池氏は、米軍CH53Eヘリが昨年10月に沖縄・東村高江の民間牧草地に墜落炎上した事件について、米軍が無許可で現場に規制線を引いて機体の残骸と土を持ち帰り、地権者すらも立ち入れなかったことを糾弾。「米軍は地権者に事故原因の報告もしていない。これでは国民の命や権利を守れない」とただしました。

 一昨年12月に米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイが名護市安部の海岸に墜落した事故で、小池氏は、米軍が海上保安庁の捜査申し入れを無視して物証の機体を回収したことに「なぜ日本側は捜査の協力すらできないのか」と指摘しました。

 河野太郎外相は「地位協定に関する合意議事録や刑事裁判管轄権に関する合同委員会合意がある」と、日本は米軍の財産である機体の捜査や差し押さえはできないと主張。小池氏は「地位協定でも基地の外での警察権は日本側にある。事故が起こっても指一本触れることができないとは、全く腰が引けている」と批判しました。

 全国知事会は7月、地位協定の改定を求めた決議を全会一致で採択しました。小池氏は知事会の研究資料(表)を示し、ドイツとイタリアでは米軍基地に立ち入る権利、訓練等の事前許可や通知、国内法の適用を実現していることをあげて「他国と比べて日米地位協定はあまりにも屈辱的だ。これで主権国家といえるのか」と迫りました。

 河野太郎外相 (独伊は)NATO(北大西洋条約機構)の加盟国の一員として加盟国間の相互防衛の義務を負っている国。異なる義務を負う日本の間で地位協定が異なることは当然にありうる。

 小池 驚きだ。この屈辱的な中身は当然であるというのが安倍政権の見解なのか。

 首相 日米安保条約は、米国の対日防衛義務に対応する義務としてわれわれが基地提供義務を負っている。そうした背景も考え比較しなければならない。

 小池 国家の主権の問題であり、このまま甘受していいはずがない。安保法制=戦争法で米国と肩を並べて戦争できるようにしながら、「日本とNATOは違う」というのはとんでもない話だ。

 小池氏は、自民党の国会議員連盟「日米地位協定の改定を実現し、日米の真のパートナーシップを確立する会」が15年前に地位協定の改定案を全会一致で可決し、当時の幹事長が河野氏、副会長が岩屋毅防衛相だったと指摘。岩屋氏が「改定案を政権与党の側から提案するところに意義がある。多くの議員の力添えで改定を実現したい」と発言していたことも紹介しました。

 小池 日米地位協定の改定を強く主張していた方々が外相、防衛相になった。政治家として信念があるなら、臆することなく、堂々と当時の主張を展開すべきではないか。

 河野 地位協定の問題は事案に応じて適切な取り組みを通じて解決していきたい。

 岩屋 日本政府としては努力をしてきている。

 小池 なんとも情けない発言だ。

 議場から「恥ずかしくないのか」という声が噴出しました。小池氏は、日米地位協定が国会でまともに審議されずに強行採決され、密室の日米合同委員会でさまざまな密約が結ばれてきた歴史経過に触れ「政府と国会が一体となって堂々と議論し、日米地位協定を改定しようではないか。これこそが真の『戦後レジームからの脱却』だ」と訴えました。

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