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2018年10月27日(土)

「法治国家にもとる」

辺野古新基地 防衛局対応

行政法研究者声明

 行政法研究者有志が26日、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり、防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき、県による埋め立て承認撤回の取り消しを求める審査請求と執行停止を国土交通相に求めたことについて、「制度を乱用するものであり、法治国家にもとるものといわざるを得ない」と批判し、国交相に却下を求める声明を発表しました。

 声明には26日現在で呼びかけ人を含め110人が賛同しています。10人の呼びかけ人を代表し、岡田正則早稲田大教授、紙野健二名古屋大名誉教授、白藤博行専修大教授、亘理格(わたり・ただす)中央大学教授が国会内で会見しました。

 声明は、行政不服審査法は「国民の権利利益の救済」を目的とし、国の機関が特別な法的地位である「固有の資格」である場合には適用しないと定めていると指摘。公有水面埋立法における埋め立て承認制度は「固有の資格」を前提とする制度だと述べ、国が固有の資格にありながら審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、「違法行為にほかならない」と批判しています。

 会見で亘理氏は「防衛局は国民の権利救済のための手段を、承認撤回の効力を止めて工事再開をするために利用している。本来の目的から逸脱した脱法行為的な手段だ」と指摘。岡田氏は「政府の中の機関が助けあう形であり、到底、公平・公正な審査はできない。結論ありきの制度の用い方で、行政不服審査制度の立法者意思を踏みにじる使い方だ」と批判しました。

辺野古埋立承認問題

行政法研究者有志の声明(要旨)

 沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う埋め立て承認撤回に対する防衛省沖縄防衛局の行政不服審査請求に対する行政法研究者有志の声明(要旨)は次の通り。

 今回の審査請求と執行停止申し立ては、米軍新基地建設を目的とした埋め立て承認が撤回されたことを不服として、防衛省沖縄防衛局が行ったものである点、きわめて特異である。行政不服審査法は、「国民の権利利益の救済」を目的としているところ(行審法1条1項)、「国民」、すなわち一般私人とは異なる立場に立つことになる「固有の資格」において、行政主体あるいは行政機関が行政処分の相手方となる処分については明示的に適用除外としている(行審法7条2項)にもかかわらず、審査請求と執行停止申し立てを行っているからである。

 そもそも公有水面埋立法における国に対する公有水面の埋め立て承認制度は、一般私人に対する免許制度とは異なり、国の法令順守を信頼あるいは期待して、国に特別な法的地位を認めるものであり、国の「固有の資格」を前提とする制度である。国が、公有水面埋立法によって与えられた特別な法的地位(「固有の資格」)にありながら、一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為にほかならない。

 また、撤回処分の適法・違法および当・不当の審査を国という行政主体内部において優先的かつ早期に完結させようという意図から、日本政府が防衛省沖縄防衛局に同じく国の行政機関である国土交通大臣に対して審査請求と執行停止申し立てを行わせたことは、法的受託事務にかかる審査請求について審査庁にとくに期待される第三者性・中立性・公平性を損わしめるものである。

 日本政府の、このような手法は、国民のための権利救済制度である行政不服審査制度を乱用するものであり、法治国家にもとるものといわざるを得ない。

 法治国家の理念を実現するために日々教育・研究にいそしんでいる私たち行政法研究者にとって、このような事態が生じていることは憂慮の念に堪えない。国土交通大臣においては、今回の防衛省沖縄防衛局による執行停止の申し立てを直ちに却下するとともに、併せて審査請求を却下することを求める。


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