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2018年10月25日(木)

主張

臨時国会所信表明

“仁”なく強権際立つ首相演説

 第4次安倍晋三改造政権が発足して初となる臨時国会での首相の所信表明演説を聞きました。外面は取り繕っても誠実さがない「巧言令色鮮(すくな)し仁」という言葉がありますが、首相の演説は文字通り「仁」がありません。首相や妻の昭恵氏が政治をゆがめたといわれてきた「森友」や「加計」の問題については一言も触れず、改造後の閣僚に続出している「政治とカネ」などの問題も言及しません。一方、憲法9条に自衛隊を書き込む改憲や消費税の10%への引き上げについては執念をむき出しにする強権ぶりです。安倍首相と政権の一日も早い退陣が求められます。

「もり・かけ」一言もなく

 30分近くの演説で首相は、「若者がチャレンジしやすい町を目指す」「全世代型社会保障改革」「ピンチもチャンスに変えることができる」「日本外交の総決算」「新たな時代のルールづくり」など、聞こえのいい言葉をちりばめました。しかし、5年以上たっても「アベノミクス」で日本経済は本格的に回復せず、所得も消費も落ち込んでいます。外交では、プーチン・ロシア大統領から領土問題の解決抜きの「平和」条約交渉を持ち掛けられてその場で反論しなかったことや、トランプ米政権に2国間の「自由貿易協定(FTA)」交渉を押し付けられた屈従外交など、破綻は隠しようがありません。

 何より見過ごせないのは、通常国会閉幕後に「今後も丁寧に説明する」と発言していた森友学園への国有地払い下げや、首相が関与して政治をゆがめたといわれる加計学園の獣医学部開設について一言もなかったことです。「森友」問題では、所管する麻生太郎財務相・副総理を改造政権でも留任させて批判を招き、「加計」問題では愛媛県が作成した記録での首相と学園理事長との面談があったのかが焦点になっているのに、全く触れないのは納得できません。

 改造政権で首相が起用した片山さつき地方創生相の国税庁への「口利き」疑惑や、宮腰光寛沖縄北方相や渡辺博道復興相らの「政治とカネ」をめぐる問題についても一切語りません。閣僚の任命責任に関わるのに、首相にはその自覚がありません。

 その半面、首相は来年10月から予定している消費税の10%への引き上げについては「経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員する」というだけで見直す考えがないことを表明し、改憲についても「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示す」と改めて強硬姿勢を示しました。沖縄の県知事、豊見城・那覇両市長の選挙で県民の反対の意向が鮮明になった米軍新基地建設についても、県民の心に「寄り添い」は言葉だけで、「結果を出していく」と強引な姿勢は変わりません。

 増税でも改憲でも新基地建設でも、民意を踏みにじる首相の姿勢はあまりに明らかです。

改造後も支持率低迷

 その首相が演説の最後で「常に民意の存するところを考察すべし」という原敬の言葉を引用したのは噴飯ものです。その言葉はそのまま首相にはね返ります。

 改造後の世論調査では内閣支持率が上昇せず、多くの調査で低下しています。民意を「考察」するなら、増税や改憲の強行ではなく、疑惑を明らかにして、退陣するしかありません。


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