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2018年10月20日(土)

主張

東京五輪経費

全体像明らかにした総点検を

 2020年の東京五輪・パラリンピックの開催経費が見込み額を大幅に上回る可能性を指摘した、会計検査院の報告書(4日発表)が議論を呼んでいます。このままだと大会組織委員会が昨年末に公表した経費総額1兆3500億円がさらに膨張し3兆円規模に達する恐れも出てきました。なぜここまで金額が膨らんできたのか。総額は一体いくらになるのか。大会組織委員会、小池百合子都政、安倍晋三政権は、国民的議論と総点検ができるよう、全体像を明らかにすることが必要です。

「膨張」への厳しい警告

 五輪経費をめぐっては昨年末、大会組織委員会が総額1兆3500億円と発表した際、組織委6000億円、東京都6000億円、国1500億円と負担額を示していましたが、詳細は明らかにしていませんでした。

 今回の会計検査院の調査は参議院からの要請に基づくものです。各省庁に照会し、東京五輪関連として挙げた15分野、70の施策について国の支出状況を調べました。その結果、13~17年度に286事業で約8011億円が支出されていました。国負担分だけですでに昨年末の発表額の5倍以上です。

 都は6000億円以外に大会関連経費8100億円を負担することになっています。また検査院の調査には18年度以降の支出額や都以外の会場がある県などの経費は入っていません。これらを含めれば経費総額は3兆円以上の規模に膨らむことになりかねません。歯止めをかける議論は急務です。

 経費を縮減させる上で大前提になるのは、事業内容や計画プロセスの透明化です。それがまともに行われてこなかったことが、国民の不信を生む事態の大本にあります。実際、具体的な事業数や支出額が明らかになったのは、今回の検査院の調査が初めてでした。「ブラックボックス」化させる姿勢を改めることが不可欠です。

 検査院の指摘について、政府内部から「対象を幅広く解釈しすぎてはいないか」という声が出ているといいます。一方、検査院は、五輪関連支出かどうかは省庁の申告に基づいて判断したとしています。あいまいな線引きが広く残されることは、国民の信頼を損ないます。ましてや五輪に便乗し、実際は関連の薄い事業を潜り込ませることなどあってはなりません。

 検査院は報告書で、「業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して、対外的に示すこと」を強調しています。安倍政権はこの指摘を受け止めるべきです。国民がしっかりチェックし監視できる仕組みをつくることが求められます。

国民的な議論が不可欠

 東京五輪をめぐっては以前、新国立競技場建設費が肥大化したことに批判が集まり見直した経過があります。政府や組織委は、国民世論の反発を避けるため五輪経費をできるだけ小さく見せようとする意図があるとの指摘もあります。いくら小さく見せても結果的に膨大な額にのぼれば、その負担は国民の肩にのしかかります。経費削減の努力こそ強化すべきです。

 12年のロンドン五輪では、開催の5年前から会計検査院や国会が費用を繰り返しチェックし国民に示すことで、予算膨張を一定抑制できたとされています。この経験に学ぶなどして透明化を進め、国民的議論を行うことが重要です。


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