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2018年10月15日(月)

これが財務省の社会保障改悪案

国民全世代に激痛 憲法の規定も無視

 森友疑惑隠しなどの不祥事連発で国民の怒りを買った財務省から、今度は国民いじめの社会保障大改悪案が出てきました。9日の財政制度等審議会の分科会に示した提言で同省は、新たな負担増と給付の抑制・削減を迫る改悪メニューを列挙。消費税10%増税に加え、若者から高齢者まで全世代にさらなる激痛を与え、憲法が保障する国民の生存権を脅かす最悪メニューです。「憲法、いのち、暮らしを守れ」と、改悪阻止へ国民的な反撃が求められています。(北野ひろみ、佐久間亮、前野哲朗、松田大地)


医療

75歳以上 2割負担に

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 医療改悪メニューの必要性を訴える財務省提言の“大義名分”は、欺瞞(ぎまん)に満ちあふれています。

 現役世代の負担と公平にするとして、75歳以上の窓口負担を原則1割から2割に引き上げるよう迫りました。今年も実施した70歳以上の窓口負担上限額の引き上げに続き、高齢者を狙い撃ちするものです。

 現役でも高齢者でも、風邪など“軽微”な症状での受診時に少額負担で済んだ患者への追加負担や、湿布や保湿剤といった医薬品の患者負担の一定額までの全額自己負担化の検討などを列挙。いずれも「小さなリスクは自助」で解決しろと求めたメニューで、結局、全世代に際限のない値上げを強いていく狙いです。自己責任を強いて、社会保障制度を担う国の公的責任は後退させる考えです。

 地域の「かかりつけ医」以外を受診すれば窓口で追加負担を徴収する案も提起。負担増から、受診をガマンした患者が重症化する危険性があります。

 がん治療薬「オプジーボ」に端を発して、高額薬について、費用対効果などに応じて保険適用から除外する案も要求。公的医療をますます“患者のお金次第”に変質させるものです。

 「地域医療構想」に沿った病床削減・再編への権限強化など、都道府県が担う司令塔の強化も並べています。市町村が国民健康保険料(税)の負担軽減のためにおこなっている法定外繰り入れを廃止させるよう求めました。いまでも高すぎる国保料がさらに値上げされることになります。

 社会保障制度を持続可能とするための改革と称しますが、国民生活を“持続不可能”にする改悪ばかりです。

介護

「軽度者」を給付外し

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(写真)憲法・いのち・社会保障をまもれとプラカードを掲げる国民集会の参加者=11日、東京・日比谷野外音楽堂

 財務省の提言は、介護保険の給付抑制のために、過去に提案したものの強い批判を受けて撤回や見送りとなった政策を改めて盛り込みました。

 政府はこの間、要支援や要介護1、2の人を「軽度者」として給付の対象から外す制度の見直しを進めてきました。15年度には要支援の人を市町村運営の総合事業の対象に移行。16年には要介護1、2の人の移行を提案しました。しかし、事業の効果・検証もされないうちから出された削減ありきの提案に、厚労省の介護給付費分科会では、利用抑制に肯定的な委員からも「重度化を招く」と厳しい批判が噴出し、厚労省は移行を見送りました。

 財務省の提言は、その実施を改めて厚労省に迫っています。

 さらに提言は総合事業の内容について「多くが移行前と同様の国による基準に基づくサービスの実施を中心としている」状態だと注文。次々と総合事業から事業者が撤退している実態には目を向けず、市町村にいっそうのサービス引き下げを求めています。

 介護保険のサービスについても、利用割合の多い訪問介護や通所介護を「供給が需要を生んでいる面がある」などと限度額内の利用までも過剰だといわんばかりの主張を展開しました。

 保険者である市町村に対しては、「軽度者」の認定率の地域差が「給付費の地域差につながっている」として、認定段階からの軽度者外しの徹底を要求。「供給量をコントロールする仕組み」の導入で給付の総量規制を強化することや、調整交付金を使ったインセンティブ(財政優遇措置)によって自治体間を競わせる仕組みの導入を提案しています。

子育て

給食費は無償化せず

 子育て支援の分野で財務省の提言は、来年10月から予定する幼児教育・保育の無償化の対象から給食費を除くことを打ち出しています。

 完全な無償化を期待していた親たちの願いに背くもので、政府の「子ども・子育て会議」でも複数の委員から給食費を無償の対象とするように求める声が上がっています。

 さらに、子ども1人当たりに必要な保育費用=「公定価格」を「適正化」の名の下に引き下げ、国・自治体から保育所・幼稚園などに支払われる費用を抑制する内容も提起しています。公定価格の多くは人件費に充てられており、強く求められている保育士の処遇改善に逆行するものです。

 また、中学生までの子どもがいる家庭に子1人当たり最大月1万5千円が支給される「児童手当」の支給対象を狭めようとしています。

 児童手当は所得制限があり、現在は夫婦どちらか年収の高い方の所得額によって受け取れるかどうかが決まります(夫婦子1人世帯は年収約876万円未満)。財務省案は、これを世帯(夫婦)の所得合計額で判断する仕組みに変えるものです。共働き世帯を標的に支給対象を狭めることになります。所得制限を超える家庭への同手当「特例給付」(月5千円)の廃止を含めた見直しも提起しています。

財界要求反映の舞台 財政審

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 財政制度等審議会は、学識経験者から任命された委員が、国の予算にかかわる幅広いテーマを審議する財務相の諮問機関です。実態は、財政制度分科会の責任者を経団連前会長の榊原定征・東レ相談役が務めるように、財界が求める政策を政治に反映させるための舞台となっています。

 「きちんとした給付は、きちんと負担しなければ受けられないと認識すべきだ」

 財務省が社会保障費のいっそうの抑制・削減を進める提言を示した9日の分科会で、委員の一人はそう言い放ちました。他の委員からは、提言以上に社会保障費抑制を求める発言が続きました。

 憲法25条は、全ての国民に健康で文化的な生活を営む権利があると定め、同時に、国民の生存権を保障するため社会保障などの向上・増進を国に義務づけています。

 ところが、提言の「改革の視点」は、憲法が定める国民の権利や国の責任には一切触れず、「費用対効果」や「財政影響」ばかりを強調。「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」などと、もっぱら国民同士の助け合いや自己責任を求めています。

 国民の生存権より国家財政を優先する姿勢が際立ったのが「予防医療」に関する記述です。

 提言は、識者の見解を引用して、予防医療は社会保障の抑制にはつながらず「むしろ増大させるとの指摘もある」と主張。“予防医療で長生きされるのは国家財政にマイナス”と言わんばかりの記述に、医療関係者から厳しい批判が上がっています。

 しかも、引用した記事で、識者が予防医療の積極的推進を国に求めた記述は隠していました。

 委員からは「オプジーボのような高額医療をみんな受けたがるが、どれを諦めるのか、投与しないのか考える必要がある」「高額医療は民間保険で」などと、経済力の差で医療に差をつけることを当然視する発言も相次ぎました。

憲法25条

 (1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 (2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

消費税10%超の声も

 安倍晋三首相は、今後3年間で医療、介護、年金など社会保障制度全般を改革すると語っています。財務省の提言は、安倍政権の社会保障改革が、来年10月に狙われる消費税10%増税とあわせて、全世代に耐えがたい痛みを押し付けるものになることをはっきりと示しました。

 自公政権はこれまで「社会保障のため」といって消費税増税を進めてきましたが、実際は法人税減税や研究開発減税といった大企業減税の穴埋めに充ててきました。提言は、「社会保障のため」という大義名分が偽りであることを改めて浮き彫りにしています。

 財政審の委員からは、早くも消費税10%増税後の新たな財源確保を求める声が上がっています。

 経団連は「税率10%超の消費増税も有力な選択肢」とする提言を発表。経済同友会の小林喜光代表幹事も「最低でも17%程度に持っていかないと(社会保障費を)賄えない」と主張しています。

 一方、経団連は、法人実効税率が高すぎるとして、現行29・74%を25%に引き下げるよう要求。財政審の委員からも「企業の負担能力は限界」などの意見が出ています。

 こうした財界の身勝手な態度には、「社会保障の抑制策を考える前に、まずは446兆円超にも上る企業の内部留保を活用して国の財政に寄与するような提言をすべきだ」(10日、日本医師会の横倉義武会長)との反発が広がっています。

暮らし第一で経済立て直す

共産党の提言

 日本共産党は13、14両日の第5回中央委員会総会で、来年10月からの消費税10%中止の一点での国民的大運動を呼び掛けるとともに、「社会保障削減から充実への政策転換」「富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革」など暮らし第一で経済を立て直す五つの改革を提案しました。


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