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2018年9月12日(水)

きょうの潮流

 世界中から年間300万人が訪れるカンボジアのアンコールワット。実際に見て驚いたのは、規模の大きさ。幅190メートルの堀に囲まれた総面積は、皇居と皇居外苑の合計に匹敵するそうです▼まだ薄暗い夜明け前。数千人もの観光客が中央伽藍の前に集まり、日の出を待ちます。一瞬の燃えるような朝焼け。浮かび上がる5本の尖塔のシルエット。自然と歴史のつくる美しい光景に、長旅の疲れも吹き飛びました▼アンコールワット内部のレリーフも見事でしたが、銃撃で欠けたところも。「ポル・ポト派の兵士が試し撃ちした跡です」と日本語ガイドのソワンさん(41)が教えてくれました。70年代後半のポル・ポト時代、虐殺や飢餓で200万人が死にました。ソワンさんの家族や親類も犠牲に▼二人の兄は栄養失調で死去。軍人だった伯父夫婦は殺され、14歳だったその息子はタイに逃れ、今はアメリカです。思い出したくないと、一度も故国に帰ってこないそうです▼近くの地雷博物館にこんな解説がありました。ベトナム戦争のさなか、親米派のロン・ノル政権が、米軍のカンボジア領内の爆撃を容認。60万人が犠牲となって、それがポル・ポト派の台頭をよんだと。イラク戦争が過激組織ISを生んだのと、同じ構造です▼日本語が堪能なソワンさん。なのに、日本に来たことはありません。費用が高いからといいます。国の復興は進んでいますが、まだ道半ば。カンボジアからも日本に多くの人が訪れる、そんな時代が早く来ればいい。


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