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2018年9月6日(木)

主張

台風21号の猛威

強風と高潮への備え、総点検を

 今年最強とされる台風21号は近畿を中心に全国各地で猛威をふるいました。強風で倒壊した家の下敷きで亡くなるなど10人以上が死亡、負傷者は600人を超えています。犠牲になった方にお悔み申し上げ、被災された方にお見舞い申し上げます。強風は広い地域で家屋被害などをもたらし、台風が上陸した近畿の沿岸部では、高潮によって関西国際空港(大阪府)が冠水し機能不全に陥るなどしました。被災者の救援・支援、被害復旧を急ぐとともに、今回浮き彫りになった問題点を徹底検証し、災害への備えを強める取り組みを進めることが求められます。

海上空港のもろさを露呈

 最大風速44メートル以上の非常に強い勢力を保ったまま台風が、日本に上陸したのは1993年の台風13号以来です。観測史上初を記録する強風が各地で吹き荒れ、家屋の屋根や店舗の看板を吹き飛ばし電柱などをなぎ倒しました。駐車場で多くの車が風にあおられひっくり返った光景は、今回の台風のすさまじい威力をみせつけました。取り入れ前のナシやリンゴが落ちたり、傷ついたりしており農業被害の広がりも心配されます。6月の大阪北部地震で被害を受けた家屋などが、今回の台風でまた損壊した可能性もあります。停電も広い地域で続き、交通機関の復旧もこれからのところもあります。

 被害の実態と全容を早急につかみ、被災者が必要とする支援を、直ちに講じることが必要です。

 近畿の沿岸部では高潮被害が相次ぎました。大阪湾の沖合5キロにある関西国際空港が冠水で滑走路が使用不能になるとともに、風に流されたタンカーが空港と対岸を結ぶ連絡橋に激突したことで、利用客ら約3000人が孤立した事態を招いたことは深刻です。

 1994年に開港した同空港は、もともと軟弱地盤の上に埋め立てで造られた人工島で、建設の段階から地盤沈下など安全性を含め、つねに問題が指摘されてきたところです。高潮の危険も早くから警告され、過去にも冠水が何度か起き、2004年の台風の際は、護岸を越えた波で滑走路の周囲の道路がえぐりとられる被害もありました。そのため「50年に1度に相当する高波」に備えるとして護岸を補強しましたが、今回の台風では被害を防げませんでした。

 海上空港のもろさを改めて露呈した関西国際空港の被害は、災害への対応とともに、沿岸部開発のやり方や大型公共事業のあり方も問うものとなっています。

 今回の高潮は、関西国際空港にとどまらず、ふ頭などで多くのコンテナや車を押し流したり、広い範囲で浸水したりするなどの被害を出しています。沿岸部での高潮、高波、津波などに対する備えの仕組みがどうなっているのか。無秩序な開発によって防災の仕組みを弱体化させていないのか。検証・点検し、対策をたてることは、全国共通の課題でもあります。

危険なくす取り組み進め

 今年は台風発生が多く、発生ペースは統計が残る1951年以降、2番目の早さとされています。高い海面水温などが影響しているとみられ、今後新たに発生する台風への警戒を怠ることはできません。台風の大型化の危険も指摘される中、強風、豪雨、高潮などさまざまな事態を想定した防災・避難体制を強化することが急務です。


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