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2018年9月2日(日)

主張

防衛省概算要求

現実を見ない危険極まる軍拡

 防衛省が2019年度軍事予算の概算要求で過去最大の5兆2986億円を計上しました。18年度の当初予算に比べ1075億円もの増額です。しかも、例年は前年度予算と同額(18年度2212億円)を盛り込む米軍再編関係経費などを金額を明示しない「事項要求」としており、これらを加えると実質的な総額は5兆5000億円超に膨れ上がります。防衛省は「現実に真正面から向き合った防衛体制を構築する」ためと説明しますが、朝鮮半島をはじめ北東アジアの緊張緩和の動きに逆行する、まさに「現実を見ようとしない」危険な軍拡要求です。

平和に逆行し憲法に違反

 19年度の軍事予算は、安倍晋三政権が年末の策定を目指している新しい「防衛計画の大綱」(大綱)と次期「中期防衛力整備計画」(中期防)の初年度に当たります。新たな大綱は、今後の日本の軍事力のあり方や水準を定める指針とされ、次期中期防は、新大綱に基づく19年度から23年度までの5年間にわたる軍拡計画となります。

 防衛省が8月31日に決定した概算要求の特徴は、日本をめぐる「厳しい安全保障環境」を強調し、あからさまに「防衛力を大幅に強化する」と宣言していることです(同省資料)。とりわけ、「弾道ミサイル防衛」能力の強化として、陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の本体2基を導入するため2352億円もの関連経費を盛り込んだのは重大です。

 8月28日公表された2018年版「防衛白書」は、北朝鮮の核・ミサイル開発について「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と繰り返し、朝鮮半島の平和体制構築と完全な非核化で合意した「米朝首脳会談後の現在においても…基本的な認識に変化はない」としています。平和の激動が始まっているにもかかわらず、北朝鮮の脅威を一層あおり、新大綱・次期中期防に基づく大軍拡を正当化する狙いは明らかで、それは今回の概算要求にも貫かれています。

 「ミサイル防衛」の強化だけでなく、「敵基地攻撃能力」の保有につながる長距離巡航ミサイルの導入も看過できません。

 具体的には、最新鋭ステルス戦闘機F35Aに搭載する射程500キロの対地・対艦ミサイル(JSM)の取得や、射程900キロの対地ミサイル(JASSM)などを搭載するためのF15戦闘機改修の経費が計上されています。

 防衛省は「敵艦隊の侵攻阻止」や「上陸部隊の排除」などを口実にしていますが、自民党が6月に新大綱・次期中期防の策定に向け安倍首相に申し入れた提言は「巡航ミサイルをはじめ『敵基地反撃能力』の保有についての検討を促進する」と明記しています。敵基地攻撃能力の保有は、憲法違反が明白な他国侵攻を可能にするもので許されません。

米国からの武器購入急増

 「イージス・アショア」の導入に伴い、米政府から武器を購入する「有償軍事援助」(FMS)が18年度の4102億円から6917億円に急増していることも大問題です。今後、米政府の言い値でさらに増える危険もあります。

 今、何より必要なのは国民生活を圧迫し「戦争する国づくり」を進める大軍拡ではなく、北東アジアでの平和のプロセスを促進する外交努力を尽くすことです。


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