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2018年8月30日(木)

きょうの潮流

 万が一の事故に対し負担は増やしたくないけど、運転はさせてもらう―。原発事故時の損害賠償の仕組みを検討してきた政府の専門部会が議論をまとめた最終案から見えてきます。原発事故に備え電力会社に用意が義務づけられている賠償金(賠償措置額)を、現行の1200億円に据え置く方針だからです▼東京電力福島第1原発事故で、東電が今年7月時点で公表した賠償額でさえ8兆円を超えています。政府は廃炉や賠償などの事故処理費用を21・5兆円と見込み、民間の研究機関では50兆~70兆円になるという試算もあります。最終案が福島の事故に向き合ったとは思えません▼賠償措置額の増額は電力会社の負担になります。専門部会では、引き上げ賛成の委員が少なくありませんでした。しかし、経団連や電力会社の代表は負担増に終始難色を示してきました▼いわく、引き上げは電気料金の値上げにつながる。さらには「企業の競争力が損なわれるから」とも。そこまでいうのなら、原発からさっさと手を引くのが筋です。原発を「ベースロード電源」と位置づけ、再稼働に前のめりなのは誰か▼ところで最終案には据え置くという文言はなく、賠償措置は「慎重な検討が必要」とあるだけ。実は、据え置く方針は、最終案をまとめた専門部会の場で政府が口頭で説明したものです▼肝心のことがはっきり書かれていない最終案をめぐり、政府は一般から意見を募集中です。あらかじめ批判を避けるねらいかと勘繰りたくなる政府の対応です。


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