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2018年8月8日(水)

主張

高校野球100回大会

生命輝く球宴、新たなステップ

 100回目の夏を刻んで、全国高等学校野球選手権記念大会が5日、阪神甲子園球場で開幕し、全国から史上最多の56の代表校が頂上をめざし、連日しのぎを削る熱戦を繰り広げています。

球音消えた歴史を記憶し

 1世紀を超える球児たちの球宴は、夏を彩る一大祭典となっています。今年の地方予選には3781校が参加しました。ここを舞台にして、幾多の名勝負や名場面がつづられ、勇気と感動を誘うドラマが語り継がれてきました。

 高校野球が多くの人たちを魅了し続けてきたのは、一投一打に精魂を込める球児たちのひたむきなプレーであり、その姿に掛け値のない生命の輝きを見つめているからではないでしょうか。この“人間賛歌”の心情こそ、長寿となった大会を支えてきたと言えるでしょう。

 大会歌の「栄冠は君に輝く」も1948年から歌われ続け、今年でちょうど70年になります。国民主権をうたった日本国憲法に歩みを重ね、「球児たちが主人公」と誇らしく歌いあげています。戦後の高校野球に貫かれてきたこの信条をかみしめ、球児たちへのエールとしたいと思います。

 長い歴史を振り返ると、「笑顔だけでは乗り越えることのできない悲しみ」(滋賀県・近江高校の中尾雄斗主将の開会式での選手宣誓)がありました。最大の悲劇は、戦前日本の軍国主義政府が野球を「敵性文化」として排除し、とりわけ42年から45年の戦争の期間にはすべての大会も活動も禁止したことです。

 本来なら、創立大会から数えて2014年が100回大会となるはずでしたが、それが4年遅れでやってきた不自然さに痛恨の傷痕が記されています。開会式で祝辞を述べた林芳正文部科学相はこの史実に一言も触れませんでした。それだけに、ゆがめられた節目に心を留め、球音の響きがやむとき、平和が失われたことを記憶し続ける大切さを痛感します。

 今回の大会から深紅の大優勝旗が新調され、高校野球は新たな高みをめざして踏み出します。主催者の日本高等学校野球連盟を軸に「高校野球200年構想」が動きだしました。その前途には超えなければならない課題も少なくありません。

 問題となってきているのが、「危険な暑さ」の中での開催です。異常な気象のもとでのプレーは熱中症の多発など、球児たちの生命と健康に関わる重大事態となっています。水分補給の措置や試合時間の変更などと合わせ、開催時期そのものの検討に本腰を入れてかかることが必要となっています。

 投手の酷使や長時間におよぶ練習時間なども改革を迫られています。ハードな練習は部活動を過熱化させ、指導者や選手同士の暴力行為があとを絶ちません。この節目の大会を機に、選手の人権の尊重、節度のある部活動の確立など、再点検する必要があるのではないでしょうか。

さらなる躍動を期待して

 人びとの希望は、100回の歴史をつむいだ生命の躍動と平和への思いを、次代にしっかりと受け継いでいくことです。

 記念大会がその新たなステップとなり、そこを舞台に真っ向勝負を挑む球児たちが躍動することを期待しています。


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