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2018年7月29日(日)

きょうの潮流

 全編が9時間半にも及ぶ映画「SHOAH(ショア)」は、今月92歳で亡くなったクロード・ランズマン監督の代表作です。ナチスによるユダヤ人大虐殺を当事者たちに問いました▼「ユダヤ人絶滅は肉体的抹殺のみならず、その痕跡の抹消という徹底性にこそ本質がある」と語っていた監督。加害、被害の両側だけでなく傍観者にも広げた膨大な映像記録は、言葉とともに人間の感情や表情の変化から埋もれていた事実を掘り起こしました▼日本で公開中の「ゲッベルスと私」。大衆を扇動したナチスの宣伝大臣の元秘書が終戦からの沈黙を破りました。政治に無関心ながら体制の中枢でまじめに働いていた1人の女性。当時の自分を「何も知らなかった。私に罪はない」と▼深く刻まれた103歳の顔のしわは、彼女の人生の苦悩を物語るかのよう。熱狂のなかで多くのドイツ人が知ろうとせず、見ようとしなかったもの。結果的にナチスに加担してしまった後悔が独白と表情からにじみ出ます▼絶滅作戦が実行された地で、痕跡やそれを記録する人たちを追った『ホロコーストの現場を行く』(東銀座出版)も記憶をつなぐ一冊です。ライフワークにするジャーナリストの大内田わこさんが彼らの活動を今に結んでいます▼「ナチスが消し去ろうとした、この場所と人びとについてのすべての記憶を取り戻す」。絶滅収容所があったベウジェツの博物館長が決意を込めて。歴史の真実を伝え続ける努力は人類が過ちをくり返さないための礎です。


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