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2018年7月26日(木)

主張

相模原事件2年

尊厳の否定を許さぬ社会こそ

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら46人が殺傷された事件からきょうで2年です。重い知的障害のある人を狙った残忍な犯行とともに、「障害者なんていなくなればいい」と殺害を正当化する元職員の被告の身勝手極まる異様な言動は、障害者・家族らを中心に国内外に大きな衝撃を与えました。なぜ被告が障害者を憎悪するようになったのか。差別と偏見を強める風潮の影響はないのか。2年たった今も日本社会に突き付けられた課題です。障害者をはじめ、すべての人の人権と尊厳が保障される社会をどう実現するのかが、引き続き問われます。

憎悪を募らせての凶行

 被告が事件前、「障害者は不幸を作ることしかできません」などとして障害者殺害の計画を書き込み、衆院議長公邸に持参した手紙の中身は、障害者への憎悪に満ちた、あまりに特異な内容でした。被告は、いまもこの考えに固執しているとされています。障害者施設で働いた被告がなぜ、障害者への憎しみを増幅させ大量殺害を実行するに至ったのか。今後開始される裁判などを通じ徹底的に解明される必要があります。

 同時に、障害者や家族らが不安と危機感を強めているのは、障害者をはじめ社会的な弱者や少数者への差別、偏見、排除の社会的な風潮の広がりの中で、事件が起きたことです。被告の考えは“人は生まれながらに優劣があり、劣った者は否定される”という「優生思想」そのものです。相模原の事件を契機に、第2次世界大戦前のナチス・ドイツが「優生思想」にもとづき障害者を計画的に殺害した過去などを想起した関係者は数多くいます。日本では戦後、優生保護法の下で、多くの障害者が強制的に不妊手術を強いられた重大な人権侵害が、いま大きな問題になっています。政府も国会も深刻に反省し、被害者への謝罪と補償を早急に行うことが求められています。

 競争をあおり、「経済的な効率性」や「成果主義」で人の価値を判断する。貧困や格差は「自己責任」と突き放す。障害者や高齢者を「社会のお荷物」と扱う―。このような現代社会の風潮は、差別と偏見、不寛容さを助長し、弱者や少数者を排除する危険をつねにはらんでいます。間違った考えを流布・台頭させない社会的な取り組みこそが重要です。

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員がLGBT(性的少数者)カップルに対し「『生産性』がない」「そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と月刊誌に寄稿した暴言は、個人の権利と尊厳をあからさまに否定したもので、断じて許されません。人を「生産性」うんぬんで判断する考えは、極めて危険です。差別と偏見に満ちた悪質な寄稿を行った同議員は政治家としての資格が根本から疑われます。この発言について「いろんな人生観もある」と何の問題にもしようとしない自民党の二階俊博幹事長の態度も重大です。あいまいにすることはできません。

一人ひとりが大切にされ

 社会的弱者や少数者を敵視し締め出すような社会に、未来はありません。すべての人の基本的人権や個人としての尊厳が保障され、一人ひとりが大切にされるために、憲法を生かした政治・社会の実現がいよいよ急がれます。


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