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2018年7月12日(木)

主張

自民・参院選改定案

党略以外のなにものでもない

 議会制民主主義の土台となる選挙制度の改変を、議会を構成する各党との合意もなしに突然持ち出し、「合区」で議席を失う議員のために恣意(しい)的に改悪する―。これを党略と呼ばないで何と言えばいいのでしょうか。自民党が参院の政治倫理・選挙制度特別委員会で可決を強行した参院選挙制度改定案です。自民党は本会議でも可決を強行し、衆院に送付し今国会成立を企てます。被害が広がる西日本豪雨への対応が急務の国会で、自分の党の都合だけの選挙制度改悪を、乱暴に推し進める自民党などの姿勢は極めて重大です。

改憲が頓挫して突然

 現在の参院の選挙制度は、各都道府県に定数が配分される選挙区選挙と、政党やその名簿に登載された候補者の得票を全国で合計し議席を配分する比例代表選挙の組み合わせです。選挙区選挙は人口の違いによって生じる「1票の格差」を解消するとして、2016年の参院選から、島根と鳥取、高知と徳島をそれぞれ「合区」し、定数2の選挙区として3年ごとに半数ずつ改選することにしました。それでも格差は約3倍になっており、「法の下の平等」から程遠い状況です。

 「合区」をめぐっては、どちらかの県から議員を出せなくなると、自民党内からも批判が相次ぎました。このため自民党は憲法9条に自衛隊を書き込むなどの安倍晋三首相が進める改憲と一体で、全ての都道府県から1人以上の参院議員を選ぶことにする「合区解消」の改憲案を持ち出しました。しかし、憲法9条と抱き合わせで進めようという策動に国民の批判は根強く、改憲は思惑通り進みません。こうした中、突然持ち出してきたのが選挙制度の改定案です。

 参院選挙制度改革は各党で協議を続けてきましたが、合意していません。改憲に固執したのも異常なら、それが困難になると一転、一方的に選挙制度の改悪を持ち出すのも異常です。自民党に民主主義を語る資格はありません。

 自民党の参院選改定案は、「非拘束名簿式」の比例代表選挙の一部に政党が候補者名簿に順位をつける「拘束名簿式」を、「特定枠」として導入するなどというものです。「合区」で立候補できなくなる選挙区選出議員や候補者を、比例代表選挙で救済することが狙いです。自民案は、ご都合主義と言うほかなく、全く道理がないものです。

 もともと「拘束名簿式」を廃止したのは自民党です。議席を失う議員を救うため、「非拘束」の一部に「拘束」を復活させる自民党案は、制度を混乱させ、党略でもてあそぶものです。改悪案はきっぱり撤回すべきです。

抜本的改革に値しない

 衆院とともに参院の選挙制度について、最高裁は繰り返し「1票の格差」解消を求めてきました。「合区」を導入した15年の選挙制度改革は法律の付則に「議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮し」、抜本的な見直しを行うことを盛り込んでいます。自民党案はこうした抜本改革に無縁です。「1票の格差」解消には得票が鏡のように議席に反映する比例代表に全面移行するしかありません。

 日本共産党は、現在の参院の議院定数を維持し、全国10ブロックの比例代表制にすることを提案しています。抜本改革に向け、各党での議論を尽くすべきです。


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