しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月29日(金)

きょうの潮流

 東京電力福島第1原発事故の刑事責任を問う裁判が東京地裁で始まってもうすぐ1年になります。裁判の争点は、巨大津波の襲来を予見できたか、事故は回避できたか―です▼業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長ら旧経営陣の3人の被告は、無罪を主張しています。秋まで続く証人尋問では、これまでに東電社員や学者らが出廷。「なんで早く(津波対策が)進まないのだろうと、フラストレーションがたまった」。先週、東電社員がそう証言しました▼この社員が所属する本店のグループは事故前、想定される津波の水位計算や対策を担っていました。当時、原発設計の新しい国の指針を受け、巨大津波を想定し、沖合に防波堤設置などの対策が「不可避」と判断して動いていたのです▼敷地を大きく超える最大15・7メートルの津波が襲う恐れがあるとの計算結果も得ていました。事故の3年前のこと。津波対策するよう、被告の武藤栄元副社長に決めてもらいたいと、先の社員は資料を準備しますが、同元副社長から「研究を続けよう」と言われ、グループの意見は採用されませんでした▼社員は「経営判断と受け止め、従うべきだろう」と。ただ、「研究しても、対策をすることになると思っていた」と証言し、その後、津波対策を進めるための体制づくりをグループの上司と一緒に上層部に進言。しかし、「必要ない」と却下されました▼津波対策は進まぬまま3・11を迎えます。事故から7年余。未曽有の事故の真相は解明されていません。


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